れとろぐ

遊星からの物体Xのれとろぐのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.6
誰が「それ」で誰が味方なのか。
南極大陸で遭遇した「それ」は対象に完全擬態し、接触したものを取り込んで増殖していく。生物学者であるブレアがコンピュータでシュミレートした結果、「それ」が人類の文明社会に到達すると、2万7千時間で侵食されてしまうことが判明。ブレアは「それ」を基地外に出さないために通信機器や交通機器を破壊し、残された隊員たちは孤立した南極基地で「それ」と対峙しなくてはならなくなってしまうのであった。
ジャンルは紛れもなくSFであるのだか、サスペンス色が強く、孤立した南極基地という閉鎖空間も相まって、観ている側は殺人鬼が彷徨く洋館に居合わせているかのような緊迫感を味わえる。
SFというジャンルは万能なもので、対峙する物次第でホラーにもサスペンスにもアクションにもなり得るのだ。本作の場合、「それ」は外見の完全擬態だけに止まらず、擬態元の思考や個性までもをコピーしているので、仲間なのか、それとも仲間のフリをしている「それ」なのかの判断ができなくなってしまい、隊員全員が疑心暗鬼に陥ってしまう。下手なサスペンス物よりも面白いのがすごいところ。電子音を使いながらも不安を煽るBGMがそんな特異なストーリーを引き立たせるのに一役勝っている。サスペンス物だと被害者は殺されたら退場し、必然的に犯人が絞られていくので、事態が悪化していく一方で犯人の目星もついてくるものだが、本作の場合は侵食された隊員は退場せずに仲間のフリをしているからタチが悪い。最後まで見ていかないと真相は分からずじまいだ。
SFもサスペンスも大好きな人には堪らない作品であることには間違いないでしょう。
カートラッセルの若かりし頃が観れるのも見どころ。でも見た目が今とそんなに変わらないからすごいよね。
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