このレビューはネタバレを含みます
刺激:3
伏線:2
展開:2
最後:3
舞台はベトナム戦争の渦中。
根っからの軍人気質なウィラードは、1週間もじっとしては居られはい。
そして、ある目的の為に命を焦がすことに。
上層部からの暗殺の命令だ。
最高指揮官となる筈の完璧“過ぎる”功績を収めてきたカーツ大佐が、過酷な戦争により自我を無くし、自らの“王国”を創立。
その常軌を逸した独断行為と非人道的な人格が目に余り、カーツを抹殺するよう命じられる。
ウィラードはアメリカ海軍に同行し、無成長な戦法を目の当たりにすると共に、カーツの議事録を追うに連れて彼に対する尊敬が増してゆく。
ウィラードとカーツは、根源的な部分が似ていたのかも知れない。
正義を貫き過ぎるが故に、それが真反対へと歪む可能性を秘めた者達。
カーツの本拠地に辿り着く迄、幾つもの苦難を経験した。
仲間を失い、罪なきベトナム民族を殺めた。
やっとカーツの拠点に辿り着くも、まるで新興宗教の世界。見渡せば無数の死体と生首。暴力と洗脳。
ウィラードはその狂気に圧倒されるも、カーツの深層へと近づいてゆく。
ウィラードが斧でカーツに殴り掛かるラストシーン。
カーツの死後、信者であったベトナム人達は、崇拝するようにウィラードを見つめる。
数時間前までウィラードを殺しかけていた者達が。
ウィラードは最後に放つ。
“此処は地獄だ”
王国が創り上げられた以上、自分が消えない限り、この地獄を消す事は出来ない。
この地獄は、自分自身の壊れた心の象徴であり、浄化剤でもある。
残虐な戦争は、かつて心を持ち合わせていた者の全てを殺す。
渦中に居る本人達はそれにさえも気付けない。気付く余地も無い。
残酷過ぎる現実が、ライトな音楽と軽快な速度で展開し続ける。まさに狂気。
きっとカーツは、誰かに抹殺される事を望んでいたに違いない。