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エル・スールの440のレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
5.0
エリセやべぇパート2。

父の想い
父への想い

朝起きたら父がいなくなった事を悟る娘 エストレニャ。
その後、幼少期のエストレニャの回想から物語は始まります。

これまた余白の多い演出で頭フル回転なやつ。
でも「ミツバチのささやき」に比べ受け取めやすい題材でした。

しかし、そこで油断しちゃいけないのがビクトル・エリセ作品な訳ですよ。
観ていると登場人物の関係性や心情に取りこぼしや補填しきれない部分を感じ、またしても自分の未熟さを痛感。

南にある実家を捨てた医者の父。
どこか家族と距離を置く母。
そんな両親に育てられたエストレニャ。

優しいんだけどかなりミステリアスな父に惹かれるエストレニャ。
そんな父とのやり取りがメインの前半からちょっとした父の真相が分かる後半までストーリーの紡ぎ方が繊細かつ緻密。
見手の心も見透かしているかのような焦らし方や少女エストレニャのなんとも言えない行動に、今作も職人のような仕事っぷりが伺える。

前回は観過ごしていた風景の美しさを今回は思う存分堪能。
そして家の前の並木道など哀愁漂う風景がまた心をざわつかせ、とても印象的。

「エル・スール」って南という意味らしいですが、まさに父への想いがエストレニャの南への想いに変わって行く様はこれ以上はないと思える結末の余韻。

エストレニャの新たな一歩と憧れ、決心。
描かれている内容のその後について考えるだけでご飯が何杯でも食べられちゃうくらいの美味さ。

これから新作「瞳をとじて」を鑑賞します。
体調を万全にして臨んだので思う存分エリセを堪能したいと思います。
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