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担え銃/チャップリンの兵隊さんのtakのレビュー・感想・評価

4.5
戦争を笑い飛ばした映画と言われたら、何を思いつくだろうか。ブラックコメディの「M★A★S★H」、ミュージカル仕立ての「素晴らしき戦争」。それらは様々な手法で戦争を笑いのオブラートに包む。でもそこには少なからず反戦への思いが込められているので、笑わせるだけでなくしんみりする何かが必ず用意されている。

しかし。喜劇王チャールズ・チャップリンが第一次世界大戦終結前の1918年に発表した「担え銃」は違う。ちゃんと笑わせてくれるのだ。

訓練風景から映画は始まる。われらがチャーリーは回れ右がうまくできない。指導されてもなかなかこなせない姿は、ドタバタで面白い。今の目線だと、この場面のような笑いは、運動オンチな人を笑いの対照にしているから不快だと言う人も出てきそう。でも、ここでこの映画を投げ出すのはもったいないぞ。

戦場に舞台を移してからは、塹壕で過ごす日々の辛さが描かれる。雨で水浸しの中で就寝する場面やチャーリーにだけ手紙が来ない場面はコメディ描写だが、自然とその映像に込められた辛さや寂しさがしみてくる。生活道具を何もかも持ってくるから身動きとれなくなり、ネズミ取りで指を挟むギャグなんて細かいけれどクスクス笑ってしまう。

チャーリーが投げたチーズが敵将校の顔に当たるギャグ。戦場で飛び交うものなんて銃弾じゃなくたっていいじゃない。さらに立木に化けたチャーリーが戦友と大活躍する後半の面白さ。この映画、爆発はあっても銃弾で相手を傷つける場面はない。それでいて戦場を表現している面白さ。そして常連エドナ・パービアンス演ずるフランス娘とのコミュニケーションも、パントマイムで演ずるサイレントだからこそ形にできるいい場面。軍服を取り替えて敵を欺くクライマックスを笑いながら、僕らはふと気付かされる。中身はおんなじ人間じゃないかって。

戦争終結前に戦争を笑い飛ばす映画を撮るという度胸に感激する。観る人を喜ばせたい一心なんだ。そしてこのスピリットが後の傑作「独裁者」につながっていく。やっぱりチャップリンは偉大だ。

それにしても配信の字幕がなんともひどい。Two of A Kindの字幕に日本語訳は「2種類」。はぁ?何言ってんの?😨。戦友の二人が並ぶ場面じゃん。「似た者同士」でしょ💢
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