みほみほ

セカンドベスト/父を探す旅のみほみほのレビュー・感想・評価

3.8
👨‍👦2020年337本目👨‍👦

爽やかな感動系かな?と思っていたら、思った以上にシリアスで驚いた。主人公グラハムの抱える心の傷と、少年の抱える傷みが重なって、二人が似た者同士に思えた。

フラッシュバック描写が自然で、心境を汲み取りやすく、少年の反発がいかにして生み出されているのかが、とても分かりやすかった。

表面上だけ見ていると、反発してみたり、試してみたり、行動がチグハグで掴みにくいんだけど…少年のような境遇にいる子供の苦しみを、養子にしたからといって、一気に包み込めるわけがないし、どんなに頑張ろうとも…実親の存在には勝てないという現実があるので、養子にする方もされる方も、信頼を築くまでに物凄くエネルギーを必要とする行為なのだというのが伝わってくる。


少年は、幼き日の父との逃避行が記憶を支配していて、父に言われた言葉がずっと頭を駆け巡っている。まるで目の前の現実に反発する事で、心の均等を保っているかのよう。自傷行為をしてみたり、暴れてみたり、湧き上がる寂しい気持ちと、父親との約束の間で葛藤し、苦しみ続けている。そして父を深く想い続けている。


一方のグラハムは、父との間に生まれた溝が少しずつ広がり、収まりつかなくなって確執となり、日々苦しんでいる。両親の夫婦仲が良いというのは、普通はとても良い事だと思うが、自分が一人っ子だと仮定して、あんな会話を聞いてしまったら…ショックの大きさは計り知れないものだと思う。父との溝に悩むグラハムに対し、叔父が言った…兄さんは子供を望んていなかったという言葉も、とても残酷な言葉に聞こえた。


そんな似た者同士の二人は、父とのストーリーを互いに持っていて、次第に馴染んでいく。

でもやはり簡単には行かない現実に見舞われて、それぞれの葛藤と苦しみが痛いほど伝わってきて、合わさりそうだった二人が離れてしまいそうになるのが歯痒い。


親の言葉って(親に限らず育ててくれた近しい親戚にしても)、一生残り続けるんだよね。良い言葉は美化され、親を誇らしく照らし続けるし、悪い言葉は心を支配し続け、そうあるべきだ!という呪縛になる。強迫観念程、苦しく苛立たしい感情はない。本当に辛いものだからこそ、親は言葉を大事にしなければならない。

自分も親になったら、言葉には気をつけないと!と強く思わされたし、親になる事の意味を分かっていない人が多い今の世の中で、自分も子供を立派に育てられるのか?自分は立派な生き方してないのに!?と考えさせられている。


親という存在の重みを、この作品は間接的に伝わりやすく描いてくれるので、観ている側に心境が入ってきやすいのも良い。


基本的に親子の物語と言うと…
母は偉大 母は強し 的な、どうにも父は母の存在には勝てないんだよ!みたいな作品が多いけど、今作は母親はフィーチャーしておらず、父に対する想いや確執が勝っている不思議な作品だったんだよね。かといって、父と子の絆の物語ってわけでもないし、それもまた新鮮だった。


それだからこそ、二人が時間をかけて作り上げていく絆が深かった。実父に会ってからの少年の反応と行動も、受け止めきれない心の暴走からもがいているようで、苦しかった。それを受け止めようと躍起になるグラハムはもう、立派に親の顔してて、びっくりした。


終盤のグラハムの寛大な選択も好きだし、グラハムも少年も、父との問題を、二人で相棒となり、乗り越える為に助け合っているように思えて、微笑ましくなりました。


ウィリアム・ハートって、出演作品は観た事あったものの、名前と顔を認識していたかったので、優しい雰囲気を持ったとても良い俳優さんだなぁって魅力的に映った。

ジョン・ハートと、実年齢が10歳しか変わらない事に驚きが隠せないが、ジョン・ハートの父親役もまた不器用で良かった。


「チョコレートドーナツ」でお馴染み、アラン・カミングがかなり若い。ここで調べてみると、映画出演2本目の作品だから、そりゃ初々しいはずだ〜!


もっと長くても良かったかな…と思ったが、グラハムと少年が、父との物語を通して、信頼を深めていく姿がとても麗しい作品でした。

絆を深めるのは、案外言葉ではなく、行動や共通の傷みだったりするのかなぁと感じました。


この作品、何故こんなに知名度がないんだろう?鑑賞記録も少なくて、驚きました。

隠れた名作を見つけた気分で、嬉しい。
みほみほ

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