つかれぐま

用心棒のつかれぐまのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
5.0
6/15_TOHO新宿#6:4Kリマスター

「無双」とはこういうこと。

西部劇的世界観のストーリーと、乾いた風と砂ぼこりが舞う巨大オープンセットがかみ合った、まさにこれぞ映画だ。「七人の侍」のウエットな要素(土着性、雨、田んぼ)とは真逆のドライな世界観が両者甲乙つけ難い傑作にしている。

七人の侍との違いと言えば、本作はシネスコの画面サイズが大きな効果を上げている。にじり寄る両一家とそれを高見から見下ろす三十郎の場面は、横長の画角を最大限に利用した面白い画作りだし、他にも随所で「二人の会話を聞く第三者のリアクション芝居」が楽しめる画面構成になっている。

クライマックス直前、舞う木の葉を包丁(権爺から借りた!)で捉えるカットがあるが、これは三十郎の回復を表現し、且つ卯之助との決着の伏線になる見事なシーンだ。その最終決戦は笑ってしまう程の瞬殺だが(ここでの三十郎の包丁の投げ方が実にカッコいい)、これも七人の侍のドロドロの死闘とまた対照的で面白い。

昨今の日本映画にも、もちろん多くの傑作がある。
ただ、この三十郎のようなキャラクターを生み出す力は、今の日本には残念ながらない。その需要もないのかもしれない。となると、これを演じる人も、創作する人も今後は出てこないのだろうな。