櫻イミト

ひめゆりの塔の櫻イミトのレビュー・感想・評価

ひめゆりの塔(1953年製作の映画)
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沖縄戦のひめゆり学徒隊を題材にした最初の映画。監督は「また逢う日まで」 (1950)や同年の「にごりえ」(1953)の今井正。脚本は両作と同じく水木洋子。

昭和20年3月、米軍上陸寸前の沖縄。女子生徒たちが特志看護婦”ひめゆり部隊”として動員され、弾丸運び、水汲み、死体運びに負傷兵の手当てにあたっていた。日ごとに増す米軍の激しい攻撃。日本軍はひめゆり部隊を残して退却していく。。。

状況説明の類は入らない。戦後8年目の公開であり、戦時中の沖縄については周知だったのだろう。映画が始まって早々に厳しい状況が描かれ、これが最後まで続くのかと胸が苦しくなる。暗い画面で音も聞きづらく、泥だらけの姿は判別もつきにくい。それがリアルだとも思う。実際の彼女たちは3月から6月までの3か月間、日々銃撃と爆撃の中をさまよったのだ。同年の「にごりえ」では実に整った映像演出を見せた今井正監督なので、本作の混沌表現が強い意図によるものなのは明らかだ。

映画は衝撃の後に余韻を残さず終幕し感傷を許さない。史実では、敗色濃厚となった6月18日、ひめゆり学徒隊に突然解散命令が出され(放置され)約1週間の間に100名以上が犠牲になった。最終的には教師・学徒240人のうち136人が死亡した。

本作は、1952年度の興行成績で第1位となった。
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