このレビューはネタバレを含みます
SNSに疲れた現代にこそ見るべき映画なのではないでしょうか?
インターネットは孤独を加速する装置である。仮想空間での人との繋がりが深くなればなるほど、現実の孤独が際立つから。
より一層孤独を感じると人はどうなるでしょうか。
人は愚かなので、インターネットにのめり込む。孤独を埋めようとするから。
そして、指数関数的に孤独は加速していく。そうすると、繋がりだけが深くなっていき、他者との輪郭がボヤけていく。
他者との輪郭がボヤけることで、様々な問題点が浮かび上がってくる。
インターネットの炎上なんて特にそうだ。人は間違ったり、頭が足りなかったりする事は当然で、失敗しながら生きていく。しかし、今は大勢の名前も知らない人間から見物され、噂され、挙げ句の果てに、気軽に石を投げられてしまう。他人の事なんでどうでもいいはずなのに、過剰に攻撃してしまう。
そんな、インターネットが孕んだ危険な構造を、2001年の時点で見抜き、人と霊の境界線に置き換えて、その危険性を指摘したクロキヨは紛う事なき天才であり、本作は大傑作である。
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と、真面目に言うとこんな感じなんですが
とにかく怖い!
昔の映像だからか、たまたまな気もするけど、ぼやーってとしてるを目を凝らして見るのが怖い。
本作を見ればわかるが、当時のインターネットは相当ハードルが高く、ハードルが高い故に民度もかなり高かったと思う。
つまり、頭が良くないとインターネットなんてそもそもちんぷんかんぷんで出来ないってことなんだけど、
クロキヨは当時から、現代のこのネットに纏わる悲惨な状況を予期していたのだろうか。
この感想を読んでいただいた方も「いやいや、んな大袈裟な、世界が滅亡してまんがな!」とお思いの方も多いと存じますが、どうでしょうか?
どんなに馬鹿でも、どんなに頭が足りなくても、どんなに危険思想な人でも片手で数回タップすればインターネットに参戦できるんですよ?当時とは比較にならないほどの人口で。
画面の向こう側と今あなたがいる側はどちらが本物なんでしょうか?
「画面の向こう側に人がいる」感覚がどんどん薄れていく、そんな恐ろしい事実に昔の映像作品であるが故のホラー演出に気付かされる。
目を凝らしてみたら、とんでもないものが私やあなたの生活の一部になってるかもしれません。
20年越しの味わいがある超一級品の映画です。