延々と歩く

回路の延々と歩くのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
3.9
 YouTubeの無料公開終了のタイミングぎりぎりでみる。2001年制作の映画を20年ぶりくらいに観直したけど、今の方がたのしめた。

 クロサワ作品特有のコンクリートにかこまれた都市生活の殺風景さとその中で孤独に苛まれおかしくなっていく様子がしっかり描かれていて、そりゃこのクオリティで活動してたら世界的に名声を得ていくわなと思う。本作もハリウッドリメイクされシリーズ三作品も作られていたらしい。

 とはいえ「有名監督らしいから見たけどあんま怖くなかった」な意見にも頷ける。コンパクトであるけど哲学的なセリフは多いし、ゾンビやモンスターがど派手に襲いかかってくるような映画でもない。

 上述したように「殺風景なコンクリートジャングル・都市生活そのものが怖い」みたいな映画だから分からんと言われれば分からん世界観ではある。

 子どものころ親の里帰りで田舎の山奥を移動しているとき、道路沿いにある小さな倉庫などが妙に怖かった記憶がある。「人に使うてもろてナンボですねん」みたいな雰囲気で佇んでるけどあんま人いなくて使われてないよねみたいな違和感でコワい、というか。

 山登りが趣味になってからメインルートを外れてウロウロしている時、昔は家族連れのレジャー目的で作られたはずだが今は打ち捨てられて草木に覆いつくされているコンクリート設備に行き当たったときも非常にクロサワ的なものを感じた。「怖い」という感覚ではないけれど、人間の築き上げた文明って周りがどうなってもそのまんまというか、人間がどうなろうと無関心にそこにあるんだな~という感じが恐怖に転じた時…というのがクロサワ映画なのだろう。
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