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回路のmitakosamaのレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
3.6
cureの黒沢清監督作。今作の公開が2000年。家庭用パソコンが普及し始めた頃だね。今ではネットがあって当たり前の時代だけど、ちょうどインターネットが日本に定着し始めた辺り。
劇中の「なんでインターネットを始めたの?」が時代を感じさせる。インターネットをやることは特殊なことだったんだよね。

ネットに繋がることに対して人との繋がりのあり方を問うような台詞もあった。これってアナログ世代の発言だよなぁ。アナログ世代の持つデジタル世代に対する畏怖。これも時代背景として作品に反映されていると思う。

ネットで流れてきた「開かずの間の作り方」。ドアに赤いテープを張り
霊がはみ出してくるようにするというもの。
誰かが始めて、気がつきと霊が溢れてきてる。次第に周りに人がいなくなる。

やはり言葉で説明し辛いジワジワくる恐怖描写は黒沢清の真骨頂。
ボンヤリとただ立っている黒い影が異常に気持ち悪い。

世の中のバランスが狂いだし、世界そのものが混沌に墜ちるという終わり方は前作カリスマと共通してる。どちらも世界の秩序が崩壊する「回路」が起動してしまうという抽象的な話。

また、人がフッと消えて居なくなる恐怖は、テレビドラマの学校の階段でも使われた手法。

パソコンのモニターに映る人ならざる者。開かずの間に潜む不自然な動きの怪しい者。コンビニに映る明らかに異界の者。ビックリ箱的な演出が一切無く、説明的なセリフもほとんどないので見る側に相当委ねられてる。
だからこそイマジネーションを働かせては働くほど薄気味悪くなってくる。

Jホラーブームの騎手の一人ながら、他の監督とは一線を課していた黒沢清。最終的に呪いが個人規模で終わらず世界にまで及ぶ。
彼の作るアンバランスゾーンな世界観は、どちらかといえばウルトラQに近いセンスなような気がする。
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