Kuuta

吸血鬼のKuutaのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1932年製作の映画)
4.1
今年最初はドライヤー特集。

・二重露光の多用に加え、肉体から離れた影が勝手に動き出す始末。肉体付きの影を見ているのか、肉体から離れた影を見ているのか、そもそも画面上はどっちも影なんだから区別なんて出来るのか…。

冒頭数分で一気に引き込まれる。モヤのかかった画面、馬鹿でかい鎌、スーッと開く扉。物を受け渡す時、フレーム外から手が伸びてきて、2人は同一ショットに収まらない。吸血鬼を倒すため、主人公が埋葬を手伝う終盤は引きに2人が入るので、現実に近付きつつある?と思ったが、そもそもあの主人公は幽体離脱した方だった気もする…。

吸血鬼が現れて村人が立ち向かう、というシンプルさと対照的に、吸血鬼が血を吸って人を殺すみたいな場面はないし、セリフも少なく、上記したような演出のオンパレードなので展開は追いづらい。ドライヤーの狙い通りなんだろうが、わからんわからんが何度も発生した。

・気絶した姉を運び込む場面の長回し、カメラが映す主役がどんどん移り変わる。画面にいろんなものが入り込む構図

・棺桶の中から見た主観ショットが鮮烈。空と木漏れ日。臨死体験のような感じ。

・音楽や効果音の使い方は割とわかりやすい。当たり前だろうが、後発の怒りの日の方が洗練されていた印象

・吸血鬼の手下に白い死が降ってきて塵に帰る、現実的な死に方をする一方、主人公は白い朝日に包まれていく。縦と横の運動の対比が効いている。生と死、白と黒があるべき位置に戻り、両者をクロスカッティングで混ぜっ返してきた縦と横の歯車=回転=映写機が止まって終幕。大変オシャレ。
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