このレビューはネタバレを含みます
1943年の成瀬巳喜男版圧勝
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📍あらすじ
能に自信有りの若者、喜多八が盲目のベテラン宗山に突撃アポなし訪問で腕比べ。喜多八の見事な鼓は死の拍子を奏でた。宗山を死に追い込んでしまう。喜多八はこのことで師匠であり父親の源三郎から破門され"流し"へ転落する。今で言うところの路上ミュージシャンで食い繋いでいた。宗山の娘、お袖は父親を亡くしたことで芸妓になっていたが三味線の才能がなく身売り寸前にまで追い込まれる。2人の若い男女は因縁の糸で結ばれており再会を果たす。
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登場する順番が違う😳
先にお袖さんが出てきた。
なるほど、これは「冷静と情熱のあいだ」の赤なんだ。
43年版にはあった、喜多八が宗山を尋ねるきっかけとなるシーンや、宿を抜け出す描写がなかった。映像はないけれどセリフで経緯は伝わってくる。冒頭は宗山サイドの視点なのね。
自分の素性を明かさずにベテランに『あなたの技を見せてください』なんてとんでもないよなぁ😅失礼にも程がある。
43年版では膝を叩いて拍子を扇動していたけれど、部屋にあった鼓を勝手に叩くなんてこれもかなり失礼😅しかも床に転がしたまま去った。頭を下げる宗山に暴言を吐き捨てて、娘であるお袖さんのことを妾と詰った。
確かに宗山も自惚れてはいた。でももっと自惚れてるのは喜多八や!
このシーンは命をかけた決闘であり、西部劇ならば早撃ち対決、武士ならば道場破りのようなもの。アクション映画にも劣らぬ迫力がある。
あれ?線香あげるシーンとか43年版にあったかな?言い訳がましいな。
数年後のくだりもお袖さん視点でスタート。
彼女があまりにも辛気臭い。そしてオーバーアクトかな。お父さん亡くしたのは気の毒だし、他のご遺族の態度は酷い。芸事にトラウマがあるのもわかるよ。不器用なりに美人で元々の性格が良かったせいか、周囲のお姉さんたちに恵まれてよかったね。困っている女性を助けられるのは女性なのかな。後輩はいびるもんじゃなくて可愛がるもんなのよ〜。世間の御局様よ、彼女たちを見習え!「千と千尋」のリンみたいでかっこいい!
43年版だと喜八郎サイドに料理人の頼れるアニキがいるんだよね👍🏻
森の稽古は美しい🌳
お袖さんは舞うことで息吹きを取り戻した。
脇役で光っていたのが上田吉二郎。芸妓を金儲けの道具としか見ていないイヤーなおっさん。さすがに巧いなぁ。
成瀬巳喜男版の方が格調高く、2人の"芸"に向き合う真摯な姿勢を応援せずにはいられない。こちらは人間関係や心理描写に焦点を絞り、メロドラマの要素が強め。セリフはあまりに直球すぎる。もう少し内に秘めていいようなことまで言ってしまってる。つまり喋りすぎ。カラーになったこともありこってり濃厚でした。しかし美男美女ですなぁ。
2025年No.79
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