Sari

真夜中の虹のSariのネタバレレビュー・内容・結末

真夜中の虹(1988年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アキ・カウリスマキ監督長編第5作。
『パラダイスの夕暮れ』に始まり、『マッチ工場の少女』へと続く、プロレタリアート(労働者の厳しい現実を描く)三部作の第ニ作。

『マッチ工場の少女』や『コントラクト・キラー』と同じ系譜の比較的シリアスな作品で、夢に憑かれて南へ下る男の波瀾万丈な旅を淡々と描いていくハードボイルド映画。

フィンランド北の炭鉱の閉山で失業した主人公カリスネンは、自殺した父のキャデラックではるか南を目指す旅に出たが、途中で暴漢に全財産を奪われ、日雇い仕事に出た帰りに車の違反切符を切ろうとした、一人の女性イルメリと知り合う。家のローン返済のため、食肉工場など複数の仕事を抱え働きづめの彼女と、その息子との間に奇妙な愛情関係が芽生える。ある日彼は、金を奪った強盗と再会し捕まえようとするが、逆に警察に連行されそのまま投獄されてしまう…。

カリスネンが投獄された部屋にいた男マッコネン(マッティ・ペロンパー)と、煙草一つで意気投合した彼らは、イルメリの計らいの〝誕生日〟ケーキと絵本に挟んであったヤスリによってあっさりと脱獄に成功。
紳士服のショーウィンドウのガラスを叩き割り、新品のスーツに着替えた二人は、売ったキャデラックを取り戻し…という流れるような展開が見事。とてもテンポが良い。

メキシコ行の船アリエル号での国外脱出を企て、偽旅券の資金にと強盗までして稼いだカスリネンとイルメリ、息子の三人が港に向かったラストでの、名曲「虹の彼方に」(Over the Rainbow)のメロディと歌詞の温かさが胸に沁み渡る。

劇中でカリスネンが男たちと見ていたのは、ハンフリー・ボガード主演のノワールだった。

2022/07/12 DVD
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