イスケ

真夜中の虹のイスケのネタバレレビュー・内容・結末

真夜中の虹(1988年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

キャデラックの幌なぁw

ミッコネンがこの世を去り行くところに、真顔で笑いを入れてくる感覚がやっぱり好き。好きすぎる。これ以上ない棺だわ。

相変わらずマッティ・ペロンパーは存在してるだけで面白くて、彼がこちらを見てるだけでも可笑しい。
ケーキをぐちゃぐちゃにするのもまぁアレなんだけど、まずなんやねんその切り方w

ペロンパーが出てくると作品がジャックされて主役以上に気になっちゃうのは良くも悪くも。いや、本当は凄く良い。


刑務所に入ったら仕事にありつけるという皮肉。
真面目に見つめれば、全編通して非常に苦しい話だ。

それでも、もはや個人ではどうにもならない生活苦による絶望と苦悩の隙間にある瞬間と瞬間に暖かな灯を与えていくカウリスマキの魔法。

ラストシーンはパラダイスの夕暮れに近い。
どちらの男女にも、あの後ずっと幸せに暮らしていく未来は正直見えない。

あの船が意味するものは絶望でも希望でもなく、資本主義社会の暗部に刹那に灯る幸せを切り取っているに過ぎないのかなと思った。

大体、人間なんて一瞬の幸せの積み重ねのために生きているようなものだから、境遇が違っても幸福度はさほど変わらないのかもしれない。
エンゲル係数が低くなれば、次の欲求が生まれて細やかな幸せは無視されていくのが常だしな。


キャデラックの後部座席に乗る少年の「風が気持ちいいね」という言葉。

日雇い労働者みんなで一つの車に乗り込む姿。

寒空の中、むさぼる美味しそうなハンバーガー。


寒くても苦しくても、刹那な暖かさを感じてしまうのよ。

だからこれでいいというわけではなくてね。
イスケ

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