くりふ

コンドルの血のくりふのレビュー・感想・評価

コンドルの血(1969年製作の映画)
3.5
【平和部隊という名のアサシン】

特集上映「ボリビア・ウカマウ集団制作 革命の映画/映画の革命」にて。

米国人医師団が来て診療するようになった先住民の村で、1年半も子供が生まれなくなった。心配した首長が調査を始めると…。

ケネディ大統領創設の平和部隊が、ボリビア先住民の女性を欺き不妊手術を行っていた事件を元にした物語。いますね、ナチス以外でも、特定の民族を殲滅したい輩が。

米国人の狼藉自体だけでなく、ボリビア国内の格差や人種差別も相まって展開するのでテーマは重量級。しかし告発という目的が力強く流れ、下から上を撃つ視線も明快で、素直に共感できました。

農村と都市に跨り、医療現場の冷やかさも含めた物語も厚く、なかなかの歯応えです。…演出のキレは、ちょっとよろめき気味ですが(笑)。

事実を知った首長の犯罪的行動など、一見フライングでも、彼らの被害(こんなことされたのは初めてでしょう)、そして彼らの文化を鑑みればそうだろうな…と頷いてしまう。

しかし弱者が叛乱すれば、報復されるのも世のならい。荒野で首長らが受ける惨劇は村に留まらず、離れた街で、差別を受けながら暮らす弟にまで影響してゆく。

兄を救うため犯罪まで考える弟(…兄の血が買えない!)が健気ですが、この映画、絶望の匂いがずっと消えない…。インディオ踏んだり蹴ったり。

…これじゃ蜂起するしかないわ!と私も説得されそうになりましたが、実際、本作の公開は、ボリビアから平和部隊を追い出す一助になったそうです。映画が現実を変えた一例ですが、作品自体にそれだけの力があったということですね。

<2014.5.7記>
くりふ

くりふ