ろく

極道黒社会 RAINY DOGのろくのレビュー・感想・評価

極道黒社会 RAINY DOG(1997年製作の映画)
3.6
まず三池こんなのも撮れるんだと吃驚。

いつもの荒唐無稽、急転直下は影を潜め、抒情が逆にこの作品のメインになる。驚きだぜ。

殺人をおかした極道(当然われらが哀川翔だ)そして売春婦の女、子供。奇妙な疑似家族が逃げる。そして振り続ける雨。

舞台を台北にしたからだろうか、雨のシーンに違和感がない。観ていて僕らは熱気まで伝わってくる。東南アジア独特の熱気。

ストーリーは単純。最後のカタストロフも単純。そう、この映画は三池があくまで逃げる男たちの抒情を書きたかっただけではないかと思う。北野映画を見ている感覚まであった。

雨が急に晴れる。三人は海岸にいる。穴を掘るとそこには壊れたスクーター。三人の笑顔。このシーンがこの物語の一番救われるシーンだとしたら、雨が降るたびにその幸せは洗い流されてしまう。

最後は切ない。三池作品のカタルシスはそこにないが、花村萬月の本を読んだような感じはあった。佳品である。
ろく

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