おーたむ

マンハッタンのおーたむのレビュー・感想・評価

マンハッタン(1979年製作の映画)
4.3
少し前にアニー・ホールを見て面白かったのを覚えてたので、ウディ・アレンの他の作品も見てみました。
なんか、アニー・ホールのバリエーションって感じでした。

アニー・ホールでもそうでしたが、本作でも、いつも必ず誰かが喋ってて、しかもそれが、アレン調のインテリ的な内容なので、だいぶ鼻につきます。
もちろん、そういう「自分を知識人だと思ってる人」が、みっともない恋愛模様を繰り広げる様子をバカにしてるのがこの作品なので、そういうふうに感じてもいいんだとは思いますが。
そもそも本作の登場人物は、少女と交際する中年男、不倫、同性カップルと、だいぶ何でもありで、かつ、自分本意。
恋愛の滑稽さとみっともなさを存分に描き出していて、そういう意味でまさに、アニー・ホールみたいな映画でした。

一方で、そんな登場人物たちとは対称的に、場面場面で映し出されるマンハッタンの街は、とても美しかったです。
モノクロの中に溶けては浮かび上がるマンハッタンを背景にすると、こんな登場人物たちでも絵になっちゃうというのは、映画の魔法ですよね。
映画のラスト、別れた恋人のもとへ走るアイザックが、ちゃんと主人公らしく見えたのも、魔法のおかげかも。

ただ、このシーンも、カメラが人物にフォーカスした途端、「自分で捨てた相手に情けなくすがりつく中年男」の姿がクローズアップされちゃうわけで、物語は徹底的に皮肉が効いてます。
はた目から見れば幸せそうな恋人たちも、近寄って会話を聞いてみれば、内容は別れ話かもしれないよ…ってこと?
ひねくれてるなあ(笑)

という具合に、極めてアイロニカルながら、美しかったりオシャレだったり、それこそ、焦点の当て方によって様々にイメージを変える作品でした。
こんなみっともない恋愛したくないなと思う反面、みっともなくなるぐらい誰かを好きになるというのは、素敵なことなのかもな、などと思ったりも。
おーたむ

おーたむ