TAK44マグナム

地獄のモーテルのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

地獄のモーテル(1980年製作の映画)
3.7
地獄の人間栽培!


ここはMOTLE HELLO。
でも、看板のOの字のネオン管が点滅していて、消えている時にはMOTLE HELLと読めちゃう。
そう、つまり「地獄のモーテル」!
何、この「スナッチャー」感は?
「スナッチャー」ってのは、「メタルギア」シリーズで有名な小島秀夫監督の初期傑作アドベンチャーゲームで、メタルギアも主人公のバディとして登場しているのですが、そのメタルギアのセリフでこんなのがあるんですよ。
「あのパチンコ屋のネオン、壊れていて危ない文字になっていましたね」
パチンコ屋の看板のパの字が消えていたから「チンコ」になっていたっていう、しょうもないネタ!
小島監督、そんなネタも平気でぶっこんでくる方なんですよね。
「スナッチャー」はブレードランナーやボディスナッチャー、ターミネーター等のSF映画を彷彿とさせるゲーム史に残る名作なのに、1番印象深いのがチンコネタっていうのはどうなのか(苦笑)
まぁ、そんな「スナッチャー 」とも小島監督とも全然関係がない80年代初期の古い田舎ホラーが本作となります。
半分はコメディ風味のユルくて楽しい作品で、もしかしたら小島監督のチンコネタもここからインスパイアされたのかも?
・・・そんな事はないか!

さて、長々と関係ないネタで引っ張りましたが、本題は「地獄のモーテル」ですね。
主演のニナ・アクセルロッドは「宇宙から来たツタンカーメン」でも知られる女優さんですが、「ブレードランナー」のレイチェル役の最終選考まで残った方でもあります。
中々の美人さんなので、本作でもキチガイ兄に一目惚れされるのも分かりますね。
相手が人間栽培しているようなキチガイだと知らずに「抱いて」と迫るシーンもあります(ヌードで!)。
監督は「アトランティス7つの海底都市」など、様々なB級作品を手掛けているケヴィン・コナー。
ケヴィン・コスナーとは何も関係ないです。


とある田舎町のモーテル。
経営者の兄妹は、表向きは愛想の良い2人だったが、裏ではベーコンに人肉を混ぜて売っている「人間栽培業」も営む変態兄妹であった!
車やバイクを罠で転倒させては人々を拉致、畑にあけた穴に頭だけ出して突っ込んで「栽培」!肥料で肥え太らせては首に縄をかけてブッコ抜き、バラバラにして燻製にしてしまうのだ!
そんなある日、いつもの様にバイクを罠にかけると男の方は即死、しかし同乗していた女子は軽傷ですんでいた。
キチガイ兄のビンセントはそんな女子テリーの美しさに一目惚れしてしまい、栽培する代わりに「飼育」することにするのだが・・・


全体的にトボけた感じで怖くて震えるような雰囲気ではありません。
人肉食モノではあるのですが、特有の人体破壊によるゴア描写で売るような作品ではなく、そういった描写は終盤まで出てきません。
その代わり、一風変わった「人間栽培」の様子を細かく見せてくれるって寸法。
まず、ドリルで畑に穴を開け、そこに捕まえた人間を首まで埋めます。
そして声を出さないように声帯を切除、デカい絆創膏を貼ります。あまりにも雑なうえに周りは土なので感染症とかになりそう。
すると、「ウゴゴゴーッ」とか「クエークエー」と声にならない声で叫ぶ犠牲者たちの出来上がり。
五月蝿いので更に頭陀袋を被せ、たまに餌を与えて肥えらせます。
時期がきたら収穫。
ヘンテコなクルクルライトの妖しい照明で、抵抗できないようにハイな気分にさせます。
それから首に縄をかけてトラクターで引っ張り出し、あとはチェーンソーでバラバラに解体してから燻製にして完了です。
この一連の作業を見せる合間に、何も知らないヒロインのテリーが命の恩人だと信じるビンセントや彼の妹アイダとピクニックしたり(お弁当は人肉ベーコン!)、ビンセントを信じきったテリーが「抱いて!」と迫ると「結婚してからじゃないと」と、ビンセントは(内心、喜びながらも)童貞だからか宗教上の理由か分かりませんが固辞。
でも速攻でプロポーズして、なんと翌日には結婚が決まって指輪をプレゼントしたりされたりと忙しい毎日が過ぎてゆくのです。
・・・なんだこれ?(苦笑)

アイダはアイダで、隙あらばテリーを亡き者にしようとしたり、人肉ベーコンのことは知らない弟(しかも保安官)が横恋慕してきたり、伝説のDJであるウルフマンジャックが牧師役で登場したりと他にも色んな事が起きるのですが、終盤になるといよいよテリーも人肉ベーコンにされそうになる展開に!
しかし弟が乱入、愛しいテリーを助けようとします。そこへ何故かブタのマスクを被ったビンセントが登場!
血みどろの兄弟チェーンソーチャンバラが勃発するのです!
火花散るチェーンソー合戦!
ここが本作最大の山場!
ブタマスクがチェーンソーを振り回すシュールさをこれでもかと堪能できますよ。
ブタマスク最高!
なんか愛くるしいし(笑)!

一方で、畑では栽培されていた人々が脱出、まるでゾンビのように唸りをあげるんですが、いつの間にやらどこかへ行ってしまうのが謎。
少なくとも10人ぐらいはいたと思うんですけれど何の痕跡も残さずに消えてしまうんですね。
「じゃあこれで解散です!お疲れ様!」ってな感じで帰宅したんでしょうかね?

そんなこんなで非常に牧歌的なホラーコメディですが、何とも言い知れぬ狂気が全編を覆っているのがカルト作品に挙げられる所以でしょうか。
テリーからして、彼氏(旦那さんかも?)が死んだばかりだっていうのに、もうお爺ちゃんの入り口に片足つっこんでいそうなビンセントに真剣になったり、そこはかとなく狂気を感じさせますしね。

古臭さは拭えないものの、人間栽培やブタマスクチェーンソーのビジュアルは一見の価値ありの怪作。


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