80年代後半から90年代前半までの邦画には"無機質さ"が満ちていたと思う。
人気が全く感じられない建設現場や廃工場、夜明けの光を浴びるスクラップの山、どこか寂しげな街並み。悲しげな音楽。
それはまるであの『鉄雄』のように生命と機械が融合したみたいで、そして、この頃に現れた仮面ライダーもそんな悲しい雰囲気に覆われていた。
昭和仮面ライダーと平成仮面ライダーの間に公開されたネオ仮面ライダー作品の第二弾で僕の一番好きな仮面ライダー作品。
ゴミと埃と生命みたいなパイプにまみれた世界で血生臭い改造手術を受けた仮面ライダーZOが、何者かのテレパシーを受けて、不気味な怪人達と闘いながら一人の少年を守り抜く物語。
この映画は作風と造形がとにかく素晴らしい。
特にネオ生命体のボス、ドラスが無茶苦茶カッコいい。
スクラップの山から作られたその姿は闇の仮面ライダーを具現化したようで、しかも本当の正体は自分を生み出した親の愛情を求める無垢な少年であり、性格は純粋悪そのもの。
主人公のZOと数回に分けて白熱のバトルを繰り広げるが、直立不動でビームやロケットパンチを放ち、やられてもすぐに元通りになるなど、その圧倒的な強さが印象に残る強敵であり、
また、ZOも負けじと電流やバイクを使ってトリッキーに戦ったりと50分という短さにも関わらず戦闘のバリエーションが多いのがとても良い。
二分弱の戦闘を長回しで撮ったラストバトルは仮面ライダーの歴史の中でもトップクラスの出来だと思う。
ストーリーは今観てみると、かなり『ターミネーター2』に近い感じがしました。
オマージュなのかも。
悲しさが溢れる世界の中でも正義の心を失わず、少年に向けてガッツポーズをするあのライダーの姿が最高だ。
「お兄ちゃん、ライダー!」