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激突!の教授のレビュー・感想・評価

激突!(1971年製作の映画)
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スティーブン・スピルバーグのデビュー作。その意欲と「映画を撮るぞ!」と漲った情熱と。
エンターテイメントとして、緊迫感に特化した撮影、演出、編集。
以上。
と締め括りたくなるほど、言い換えれば、それだけしかない映画でもある。

「歴史に風化しない傑作」というよりも、映画をよく勉強した優等生の、それこそ映画学校の卒業制作の中で、とびきりクオリティの高い作品があった、というような印象。
それぐらい低予算映画であったとしても、アイデアや工夫で面白くできるということではある。

冒頭のカーラジオが流れる車窓風景の羅列。これで普遍的なアメリカでの長距離移動のかったるさをしっかり表現して掴んでくる。
主人公は、どうやら家庭にも色々事情を抱えているっぽくて「急いで目的に着く必要がある」ということが明示される。
そこで前を走行する、厄介な、これでもか、とデカイ、タンクローリーを追い越していくことから恐怖が始まる。

運転手の顔が見えない。
運転手は誰だ?
ただ、追い越しただけなのに。
そして、緊張感からヒステリックになっていく主人公。

現代ではしっかりテンプレート化されたサスペンスの常道がしっかりと提示されていて、先駆者であり、その語り口の映像的手順がとても丁寧である。

だからこそではあるが、テクニックに対してもはや、冗長に感じたり、生真面目さが鼻についてしまったりというのは、進化しか現代の映像に慣れ切ってしまったこちら側の弊害である。

ただ厳密には違うが「煽り運転」といったことが、現代では特に社会問題になるほど取り上げられてもいて、変な普遍性も感じたりもする。
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