Sari

ムカデ人間のSariのネタバレレビュー・内容・結末

ムカデ人間(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「胸糞映画」に属するカルト・ホラー。

ドイツ人医師のヨーゼフ(ディーター・ラーザー)は、かつてシャム双生児を分離する凄腕の名医として活躍していた。現役引退後は、人間の口と肛門を結合させる「ムカデ人間」を作り出すことに憧れを抱いていた。逆転の発想で人体を「繋ぎ合わせてみたい」という恐ろしい計画を立てていた矢先に、旅行中の夜、運転する車がパンクしてしまった若い女性2人が運悪く医師の自宅に助けを求めてきたのが地獄の始まりであった。


ドイツ人俳優ディーター・ラーザーがマッド・サイエンティストの医師に紛する。その顔は、一度見たら忘れ難い超個性的なキャラクター。白衣のデザインがスタイリッシュ。
人間嫌いで、自らの理念に従って犬と同様に人間を繋げてしまう冷酷さ、異常な性癖が満たされてエクスタシーのような表情まで全てが不気味である。
(現在公開中のライナル・サルネ監督『ノベンバー』が遺作とのこと。)

膝の靭帯切断、結合するための抜歯、唇の粘膜を切除する…など手術前の説明が恐怖のピーク。麻酔から目覚めた後、鏡で自分の姿を見せられ絶叫しようにも声が出ない。三人の結合部は固定バンドで隠れているのでリアルではない。先頭のカツロー(北村昭博)だけが口が自由になるため、日本語、なぜかヤクザ口調の関西弁で脅すのが何だか滑稽だが、絶望しかないという不条理さを強調したかったのだろうか。逃亡を図るも失敗、罰として最も悲惨な真ん中にされてしまったヒロインのジェニーだけが生き残ってしまうのがまた胸糞悪いが、見終わった後、自分が平和に生活出来ている現実にホッとする。

旅は解放的になるが、夜中にクラブへ薄着で繰り出す危機感に欠けた若い女性に対する警告かも知れない。パンクした車内で待機していると、体目的の気持ち悪い男が車を横付けしてきたことから、彼女たちは車から逃走し1時間も森を彷徨い、医師の家を見つけるという動機づけが上手い。

王道ホラー+変態ブラック・コメディというような、この設定を考えつくトム・シックスはなかなかヤバい。シリーズ2、3と内容がどんどん過激になっていくそうだが、おそらく本作が1番面白いのでは?

2022/11/16 DVD
Sari

Sari