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叫のundoのレビュー・感想・評価

(2006年製作の映画)
3.8
聴こえる、恐怖。

黒沢清監督。
いつもお世話になっているフォロワーさんのmuraさんからオススメ頂いた作品。
これと『LOFT』を観ます。

東京湾に、身元不明の女性の遺体が上がる。
海水で窒息死させられた殺人事件だ。
刑事の吉岡は捜査を開始するが、続けざまに同じ手口の事件が発生する…。

強いてカテゴライズすると、ホラーとかサスペンスになりそうだけど、黒沢清の作品に関してはあまり意味をなさない気がする。というか、映画に関してのカテゴリー分けは、どんな作品かを紹介するためのツールに過ぎないのだろう。

ホラー映画はビックリ系よりも、行間に潜む魔を感じさせてくれるような、じめじめした方が好きなので、本作は好み。
『CURE』でも感じた、暗い昏い薄曇りの映像。そして無機質な静寂が心地良く、そして怖い。

そんな不思議に落ち着く空気感なのだけど、その総てを切り裂くように聴こえる叫び。
そして赤。

女性の甲高い叫び声はなぜこんなに神経を消耗させるのか。しかも、恐怖や驚きを感じさせるトーンではなく、感情の乗らない、無機質な叫び。怖いんですけど。

やがて物語が進むにつれて、無機質な叫びの正体がわかるような気がしてくる。あってないような理不尽なロジック。それこそが、恐怖の正体。
ついには叫ぶ、男も。

先にも書いたように、作品の雰囲気は『CURE』に似てるけど、テーマ的には『ダゲレオタイプの女』に近いような気がする。
目や耳から感じる感覚的な恐怖と、その正体を理解することで得られる心理的な恐怖の二重奏。
良質な作品でした。
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