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隠し砦の三悪人のshunsukehのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
3.0
題名の「隠し砦の三悪人」とは誰なのか。やはり、太平、又七、六郎太だろう。しかし、彼らは「悪人」なのか。太平と又七は百姓だが、戦を経ての出世や、一攫千金を狙っている。彼らはただ自分の欲に正直なだけの男たちで、その上、殺された落ち武者の持ち物を奪わないほどの最低限の倫理観は保っている。ましてや、六郎太は忠君の侍大将である。妖しげに正体を隠すのも、太平、又七を威圧して従わすのも、敵をなで切りにするのも忠君の証である。それであれば、落城した城の隠し金を探させるために徴用した者たちを死ぬほどこき使う勝ち軍の将の方がよっぽど悪だ。しかし、彼のその行為とて、ただただ忠君の現れなのかも知れない。それほどに人や物事の善悪は見方によって変わり、移ろいやすいものなのだ。この題名には「悪人」とは呼べない者を「悪人」と呼ぶことで、そんなことを逆説的に込められているのではないか。
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