shunsukeh

セッションのshunsukehのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.5
この映画では二つの相克が描かれている。一つは、唯一無二の高みを目指す者と平凡な幸せ求める者の間の大きく深い隔たりだ。前者はアンドリューで、後者は彼の恋人になりかけたニコルやアンドリューの家族だ。アンドリューは家族との団らんで兄弟たちと自分との違いを明確に語る。しかし、家族には理解されない。また、ニコルに対しては、彼女が自分の目標達成のための邪魔になることをストレートに伝え、彼女の心情に対する想像力の無さを見せつける。この両者が解り合えず、手を取り合って生きていくことが難しいということを描き出している。
もう一つは、アンドリューとフレッチャーの強烈なエゴのぶつかり合いだ。アンドリューは伝説のプレーヤーになることを、フレッチャーは伝説のプレーヤーを育てることを激しく望み一切妥協しない。アンドリューは交通事故で重傷を負いながらそのままコンテスト会場に向い血まみれでドラムを叩く。フレッチャーは不満足な演奏をする学生を激しく罵倒し追い込む。「フルメタルジャケット」の海兵隊訓練キャンプを彷彿とさせるほどだ。ラストのコンサートの場面で、この両者はジャズの演奏という舞台で戦う。フレッチャーは執念深く狡猾、老獪な手段でアンドリューを潰しにかかり、アンドリューは若者の無鉄砲さを発揮し力業で突破しようとする。それまではフレッチャーに認められることで次のステップに進もうとしていたアンドリューは、このときフレッチャーを乗り越えようとする。この戦いはアンドリューとフレッチャーのセッションでの圧巻の演奏へと昇華する。
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