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囚われの女のらのレビュー・感想・評価

囚われの女(2000年製作の映画)
3.5
シャンタル・アケルマンの映画は1970年代の作品しか観たことがなかったので、2000年に公開された本作では、きちんとカットを割ったり切り返しのショットを使ったりしていて"普通の映画"の撮影手法に近づいているところにまず新鮮さを感じた(さすがに全然普通の映画ではないのだけれど)。しかし、どういう文脈かは分からないが、アケルマン自身は本作が「初期の作品に似ている」と言っているし、80年代にはコメディ作品も撮っていたようなので、その間の公開作品も機会があればきちんとチェックしなければと思う。

映画の話法としては洗練されたとも言えるけれど、個人的には『私、君、彼、彼女』(1974)、『ジャンヌ・ディエルマン』(1975)、『アンナの出会い』(1978)などのむき出しのスタイルの方により惹かれてしまうことは否めない。だが、圧倒的に女性が画面の中心にいた前述の作品群とは違い、男性のシモンが(表の)主人公であることによって、抑圧(囚われ)や不安の構造を男女の"関係性"から炙り出しているところには、かなり面白みを感じた。
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