いち麦

海の上のピアニストのいち麦のネタバレレビュー・内容・結末

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

戸籍がないという現実的な問題とは別に、青年ピアニスト“1900”が下船して大陸の土を踏む勇気を最後まで持てなかったのは何故なのだろう。豪華客船ヴァージニアン号は欧州から大勢の移民をアメリカへと運んだ。“1900”は親が自分のアメリカン・ドリームと引き換えに船中で捨てた子供…だからこそ眼前に広がる自由の国を拒んだのかも知れない。メラニー・ティエリー演じる少女との会話は、描かれない彼女の父親と彼とのエピソードにその理由が隠されているのではないかと想像させる。

それにしてもエンリオ・モリコーネによる音楽〜“1900”の弾くピアノ楽曲はどれも素晴らしく聴きどころだと思う。クラシックからポピュラーまで著名な既製曲のモチーフが数多く聴き取れて興味深い。マックスを船酔いから救い出す場面で、“1900”の弾くピアノが船室のフロアを漂う映像はとても華麗で魅力的。ただ、彼がどのように船内でピアノをマスターしていったのかは全く描写がない。神話かファンタジーのように思わせる演出なのだろうが少し物足りなく感じた。
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