こたつむり

ソーシャル・ネットワークのこたつむりのレビュー・感想・評価

ソーシャル・ネットワーク(2010年製作の映画)
3.9
甲高い音が鳴り響く知的興奮に満ちた物語。

熱量の高い会話ばかりの作品…。
というのが第一印象でしたので「デヴィッド・フィンチャー監督らしくないなあ」と感じましたが、これは大間違いでした。確かに他の作品では重厚な雰囲気が目立ちますが、ピリピリとした緊張感が流れているのは本作と同じ。それは、羽虫の音のように細かい音の繰り返し。

だから、この緊張感に魅せられると。
思わず口角が上がり、“自分勝手で嫌な奴”と評される主人公の言動が面白くなってくるのです。それは共感ではなく好奇心。「傍若無人な言葉を聴きたい」という下衆な感情。まあ、だからと言って身近な存在だと甚だ迷惑なのですけれども。

そんな心の奥にあるドロリとした部分を。
刺激してくるのは、さすが監督。見えない着地点を模索する独特の筆致を存分に楽しめる作品でした。まあ、勧善懲悪とか明確な起承転結を求めてしまうと厳しいものはありますけどね。それでも、知的好奇心は存分に満たしてくれます。

しかも、実話なのか。
それとも過度の演出に塗れた物語なのか。
そこが容易に判別できないこともポイントです。実在の人物、事象を取り扱っていますからね。本人承諾の上で製作されていると思っていたのですが、かなり曖昧みたいですな(確かに本作を全肯定していたら、かなりスゴイことだと思いますが)。

だから、何も考えずに臨めば。
“フェイスブック”の創始者たちの物語です。
それは“実在する果実”と同じ。そのまま食べて出来具合を評すれば良いのです。「あー。今年のモモは美味しいねえ」といった具合に。

しかしながら、事実を脚色した物語と思えば。
それは“果実を元にした加工食品”ですからね。
監督が素材を如何に活かして作り上げたのか、という観点で臨んだ方が楽しめます。しかも、人間の“欲望”というものを的確に描き出して、俎上に載せることには成功していますからね。うん。かなり濃厚な味付けですよ。

まあ、そんなわけで。
虚実のどちらが正解だとしても。
知的好奇心を満たし、途切れない緊張感を堪能できる作品です。脳細胞をピリピリと刺激する作品をお求めの場合は最適だと思います。また、一部のアメリカ人の価値観を知るにも最適な作品ですね。あの感覚は日本文化には馴染まないと思いますけども。
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