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シェルタリング・スカイのTOTのレビュー・感想・評価

シェルタリング・スカイ(1990年製作の映画)
4.3
有限の時間を無限と思い込み、いつだって戻ることができると進んだ先で、もう戻れないことを知る。
「自分の人生を左右したと思えるほど大切な子供の頃の思い出さえ、思い出すのはせいぜい4~5回、あと何回満月を眺めるか?せいぜい20回。」
重い荷物を持ってアフリカにやってきたアメリカ人夫婦が愛を信じることも体で繋がることもできず、いざその愛を再び信じようとした時には、自分も進むべき道も見失い、最後は身一つとなる。絶対の孤独。
お金も荷物も知識も教養も自我も消える虚無が、ヴィットリオ・ストラーロの圧倒的な映像で綴られ、坂本龍一の音楽がエモーショナルに鳴り響き、後半には台詞すら消える。
見知らぬ土地で思わぬ場所に導かれる人間の無力と諦念を痛いほど滲ませて、ベルトルッチは苦しみの旅を終わらせる。
音楽と原作者による語りが大きすぎるけど、観終えて耳に残るのはあの哀切なメロディで、目に残るのはデブラ・ウィンガーの全てをはぎ取られて揺らぎ、混乱し、空っぽになったあの表情。
死にたくなるほど辛い。あまりに辛い。胸が痛い。
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