ろく

カジュアリティーズのろくのレビュー・感想・評価

カジュアリティーズ(1989年製作の映画)
3.5
ぶらいあんでぱるま⑤

デパルマがデパルマらしさを封印。当時流行っていたベトナム物(この前にキューブリックやコッポラ、さらにはオリバーストーンの「プラトーン」もあった)をよっしゃ俺も撮ってやるかとばかりに当時大人気のM.J.フォックスとともに映画化。観ていて思ったのは「デパルマ、マジメに撮っているじゃん」。ここにあるのは「俺ベトナムも撮れるんだよ」という虚栄のかがり火だろうか。

ただ映画単品として考えるとそんなに悪くない。まあベトナム戦争自体が「アメリカの偉大な反省」の元につくられているのであまり文句は言いずらいと言うのがホントのところ。この作品もそうだけど、このテーマ自体(軍人がおこす性被害)が(文句つけようもなく)重いのでやはり心動かされる。しかし性被害ってのはなんで起こるかねえ。一番卑劣なんだよなぁ(ウクライナでも性被害が問題になっている。これに関しては単純に鬼畜の所業)。

ただデ・パルマ自体は結構ベタな監督なんでストレートに善人を入れてしまう。それは分かりやすいんだけど、その一方で彼の苦悩が少し一面的なのも否めない。M.J.フォックスの役どころはあまりに薄っぺらいと言う意見もあるだろう。ただその一方でメッセージはダイレクトに伝わるのでこれは良いのか悪いのか。僕はそこまで嫌いではない。

ベトナム戦争のシーンはデ・パルマらしさあり、やはりなかなか見せる。特に川沿いでの銃撃戦はデ・パルマの過剰演出もあってよい。よいよい……


ここまで書いてうーんとなってしまった。どうにもベトナム戦争映画のお手本みたいな出来なんだよ。確かに映画としてはアリなんだけど、僕が見たいデ・パルマは此れではないんだよなぁと最後思ってしまった。僕が見たいデ・パルマは無駄に過剰、無駄に饒舌、無駄に執拗なの。そこがないのがちょっとね。。。。ちょっとね。

※それでも性犯罪に関しもっと声高に叫ぶべきだと思うし、その一つとしてこの映画があるのは肯定する。そんなことしないよと言いながら実際リアルにそんなことをしてきた人物(もう縁は切ってしまった)も知っているのでホント憤懣やるかたないときがある。

※デ・パルマ映画としては異質だろう。実際僕もこの作品を封切りで見たがその時はデ・パルマだとは気付いてなかった記憶がある。当時はベトナム戦争ものが多かったので少し食傷気味だったのかもしれない。
ろく

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