たぼ

カジュアリティーズのたぼのレビュー・感想・評価

カジュアリティーズ(1989年製作の映画)
4.0
デ・パルマの自伝映画でこの作品を知り、観るに至ったわけだがやはり戦争映画はどれも全て暗く、重い。
本作はベトナム戦争下で起きた、米兵によるベトナム女性の強制拉致にレイプ惨殺という実話を元に作製された映画である。

この事件はベトナム戦争のすべてを記録した通称ペンタゴン・ペーパーズの暴露により明るみに出た全貌のうちのひとつであり、作中においても一貫して要点がはっきり纏まりきってるのが高評価。
そしてマイケルの持ち前の雰囲気と対比するが如く圧倒的で傲慢な軍曹役のショーン・ペンの演技と、役柄のコントラストが明確になっている部分もまた見事の一言。

だが、本作を通して我々が最も考慮しなければならないのはひとりの人間としての根本的な部分の“モラル”だろう。
道徳や倫理、そして人生、社会に対する精神的態度だ。
ここは問題点が非常に複雑で、線引きが難しいのだが、少なくとも戦地だから兵隊でなくとも敵と同じベトナム人なら何をしても勝手だ、という人種以前に一個人の人間としての尊厳を無視した行為。
あのような、いつ撃たれるか分からないという気の休まらない日々を過ごしていれば精神的に参るだろうし判断力について何とも言えない部分もあるが、「だから蹂躙しても別に構わない」のかどうかという事なのだ。

この問題についてはいくら考えても永久的に解決しないものだし、深い傷跡しか残らない“戦争”はもう二度と起こすべきではない。
この映画はそういう意味でもっといろんな人に見てもらい、後世にも遺すべき作品のひとつだと思う。

「俺たち、間違ってないか
何か勘違いしている
いつ吹き飛ばされるか分からない
だから何をしてもいいと
何も構わなくなる

だが、きっと逆なんだ
大切なことは反対だ

いつ死ぬか分からないからこそ―
余計に考えるべきなんだ
構うべきなんだ
きっとそれが大切なんだ」
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