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太陽の誘惑の一人旅のレビュー・感想・評価

太陽の誘惑(1960年製作の映画)
4.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
フランチェスコ・マゼッリ監督作。

イタリア中部の古都を舞台にした映画で、現代のイタリア貴族の子孫達が織りなす狂騒と退廃の日常を描いています。

親の財力で自由気儘な贅沢な暮らしに埋没している貴族の子孫達と、上流階級に憧れて彼らに接近する下宿屋の娘を中心にして、戦後イタリア貴族の生態を暴いていく群像ドラマですが、貴族の子孫の思考を画一的に描くのではなく、庶民的な生活に憧れを抱いている者や、特権&財力で好き勝手に上流ライフを満喫する者、実は破産しているのに貴族的な暮らしを捨て切れない者―といった貴族の子孫達それぞれの思考&行動パターンを群像的に提示しています。

本作は、貴族独自の閉塞的なライフスタイルを庶民のそれとは明白に異質なものとして、あたかも別世界の人間のように取り扱った“戦後貴族解剖物”となっていて、貴族という階級ピラミッドの頂点に位置する若者達の奇妙な生態が気怠い音楽&ムードの中に描かれています。

貴族の世界に自ら入り込んでいく庶民階級の娘をクラウディア・カルディナーレが好演していて、浮世離れした貴族の暮らしという“理想”と下宿屋の娘としての貧しい暮らしという“現実”の狭間において、最後に彼女が下す冷淡な決断に唖然とさせられます。
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