桃子

邂逅(めぐりあい)の桃子のレビュー・感想・評価

邂逅(めぐりあい)(1939年製作の映画)
4.6
「元祖すれ違い映画」

この映画は「めぐり逢い」というタイトルで2回リメイクされている。1957年のレオ・マッケリー監督自身による「めぐり逢い」、さらに1994年のウォーレン・ベイティ主演の「めぐり逢い」。ほらぁ、リメイクでも同じタイトルで大丈夫じゃない!なんで「間奏曲」が「別離」になったんだか。ブツブツ… なお、トム・ハンクス&メグ・ライアンの「めぐり逢えたら」はリメイクではなくオマージュ作品なんだそうである。へえ~~~
それにしても、「邂逅」って、すごい邦題。すんなり「かいこう」って読める人、今の時代にどれくらいいるんだろう?私も最初は読めなかった。英語の原題は「Love Affair」、つまり「情事」である。そう言えば、大好きな森瑤子さんの作家デビュー作が「情事」だった。「夏が、終わろうとしていた」という出だし、痺れたっけ…
男の名はミシェル。フランス人で、アメリカの富豪令嬢と婚約したばかりのプレイボーイ。女の名はテリー。ニューヨークのナイトクラブから身をたてた歌手で、実業家のパトロンがいる。お互い、決まった相手がいるのに、ニューヨークへ向かう客船の中で知り合って恋に落ちてしまう。まだ結婚していないので不倫と言えないのだけれど、浮気には違いない。しかし、9日間の旅の間でその浮気が本気へと変わっていく。ふたりは半年後にエンパイアステートビルの102階の展望室で再会することを約束するのだが、ハリーが事故に遭ってしまい、再会できなくなる…
当時は携帯電話なんてないから、突発的な出来事が起きても連絡のしようがないのだ。こういうシチュエーションが「すれ違い」を生じ、見ている方ははらはらドキドキするわけである。私は生まれる前だったから聞いていなかったけれど、ラジオドラマの「君の名は」を作った人って、絶対この映画を見ていたと思うなあ。半年後に橋の上で再会しましょうって、そっくりですわ。
携帯電話があったら成立しない物語である。だからこそ、この時代の切ない恋愛事情が胸に迫ってくる。エンパイアステートビルのエレベーターの傍で、テリーが降りてくるのを待ち続けるミシェル。何時間も待つのである。私も若いころ、駅の改札口等で人を待っていた時、約束の時間に現れないとはらはらしたものだった。伝言板に「先に行きます」なんて書いたり。懐かしすぎる~~~~
あと、ふたりがマデイラ島に途中下船してミシェルのお婆さんに会うシーンがとても素敵で心に残っている。この場面で、ふたりの気持ちがぐっと近づいたのだと思う。お婆さんがテリーに送る約束をした愛用のショールが重要な小道具になっていた。
ミシェルを演じているのはシャルル・ボワイエ、テリーを演じているのはアイリーン・ダン。ふたりともとても魅力的で、見入ってしまった。紆余曲折の末のハッピーエンドって、やっぱり素敵。最近は悲恋の映画ばかり見ていたので、たまにはこういう幸せなエンディングも見ないと心が枯れてしまいそうだ(笑)
ボワイエは「ガス燈」でガラッと極悪人に変身している。とても同じ俳優さんには見えないから、演技って凄いなあと改めて思ったのでした…
桃子

桃子