荒野の狼

私の優しくない先輩の荒野の狼のレビュー・感想・評価

私の優しくない先輩(2010年製作の映画)
4.0
102分と短い映画で、全体に明るく展開もあるので飽きることなく見られます。主人公の語りによって話が進行していくかたちがユニーク。表面は明るくかわいい主人公の川島海荷なのですが、内面は他人を利用するなど、ずるくて汚いところがあり、考え方は家族も含めて人間関係は一時的なものと冷めていたりします。その上、身体的には、心房中隔欠損症という心臓の病気を抱え、運動も制限されていたりして、暗くなっても致し方ない人物像なのですが、それを底抜けに明るい声で語るので、映画自体には暗さの影は微塵もありません。このように外見は、誰から見ても愛すべきキャラクターなのに、内面は、誰もがもっている嫌らしさがあり、まさに等身大の高校生といえ、このようなユニークな人物像は今まで映画やテレビで主人公になったことがなく、非常にユニークで魅力的。内面の汚さが露見しなければよいとしていた主人公が、どうかわっていくのかが映画のひとつのテーマで、単純なコメディーとか青春恋愛映画の枠を超えています。優しくない先輩役の金田哲は怪演ですが、“自分の内面の汚さが嫌い”と言えるなら、人はそれでいいんだと、高校生ではまず考えられないような素晴らしい人生哲学を語ります。無骨な父親役の元プロレスラー高田伸彦もラストでいい演技を見せています。舞台か漫画にしかでてこないような底抜けに明るい川島と金田の演技に、鑑賞後の後味の良さを保障します。わかりにくい結末ですが、底抜けに明るい歌と踊りのエンディングを見ているうちに、なんとなく納得させられてしまう不思議な映画です。
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