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長屋紳士録のditaのレビュー・感想・評価

長屋紳士録(1947年製作の映画)
4.5
そこに必死で生きようとする命があるならば、見捨ててはいけないのだと思うのです。嫌々押し付けられたとしても、腹を空かした命がそこにあるならば、おむすびを差し出してあげる優しさが必要なのだと思うのです。一度は置き去りにしたとしても、その命が「生きたい」と必死で追いかけてくるのならば、大人はその命を全力で守らなければならないのだと思うのです。大人がきちんと叱れば子供は反省する、大人が笑えば子供も笑う、間違ったことをしてしまった時はごめんなさいと言う、当たり前のことを当たり前におこなえば、血は繋がらなくとも愛情で繋がれると思うのです。大それたことはしなくても、ひとりで頑張りすぎなくても、みんなが少しずつのお節介を持ち寄ればいいと思うのです。

だからこそ、西郷どんの前にいる子供たちに胸が苦しくなるのです。戦争が人々の当たり前を奪ってはいけないと思うのです。


戦後すぐ、自分ひとりが生きるのも大変な時代の物語。小津は未来が見えるエスパーだとずっと思っていたけれど違うと確信した。何十年も前から小津は知っていたのだと思う、人は本当は温かいということを。わたしもお節介をたくさん焼こう。大切な人に、あなたが大切ですと伝えよう。
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