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鳥のLzのレビュー・感想・評価

(1963年製作の映画)
3.7
丁寧に作られた人物像と対比して荒々しく不気味な鳥の猛攻が衝撃的で、パニックの間に挟まれる人間ドラマにおいても、鳥の行動に関しても、語りすぎない所に情緒が含まれてる感じがして、その塩梅に引き込まれた。

全編音楽は無く、鳥の羽ばたく音だけが響き、日常に粗雑に混ぜ合わされた異様な恐怖が、鑑賞者にも襲ってくる。未知ではない、あくまで身近な存在によって引き起こされる、原因も、解決法もわからない現象。決して大袈裟とは言えないのが、更に恐怖を煽る。突拍子もないように見えて、実は全てが地続きなのかもしれないと思わされてくる。

物語の展開もずっと引き際が良くて、不可思議なパニックの渦中だからこそ読み取れる人々の心中の機微や変化、そして事の進退が明らかにならずにただ逃げるしかない不気味さにじわじわ侵食されて、ラストの景色がより一層脳裏に焼き付く。

下手なSEなどが入らないのがとても良い。閑静な田舎での静寂、顔見知りが集まる空間で繰り広げられる会話劇。まるで自分もその仲間入りをしてるかのような気分になる。
主人公があの中では異端の人物というのが関係してるみたいだけれど、その先に理解が進まないもどかしさ…。孤独な彼女が、ミッチの母親に介抱されて母性を感じ、ホッとした表情をするシーンが印象に残っている。

私にはまだ難しくて、もっと色んな知識があれば様々な解釈ができて面白いのだろうなと思った。でも映画としてはとても好き。
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