イトウモ

菊次郎の夏のイトウモのレビュー・感想・評価

菊次郎の夏(1999年製作の映画)
3.5
夏休みだし、と思って再見。

思いのほかぐだぐだだった。
両親のいないおばあちゃんと二人で暮らす子どもが知らないおじさんと二人で、お母さんに会いにいくがお母さんにはすでに新しい家族がいて、顔だけ見て悲しんで帰ってくる。
このまま帰るのでは具合が悪いので、おじさん4人と子どもでだらだらキャンプして帰るのだが、から騒ぎのようないつものたけしのコントの調子の乾いたおふざけが物悲しい。

ロマンポルノとかを時代順に見ていくと、80年代くらいから都市とか街路が急に清潔で現代的になっていく。たけしには河原者としての芸能社の感覚と、それがなにか間違って華やかなテレビの場所で働いているという感覚が両方あるのだと思う。

逆に現代映画では極端に貧しい環境で起きる、悲劇的な事件を誇張した邦画がたまにあるが、たけしの映画の小汚いおじさんたちというのはそういうのではない。たけしは小汚い場所を描くのではなく、清潔になってしまった場所で居心地悪そうに除け者にされている小汚いおじさんを描く。長生きしすぎたせいで時代に取り残されたおじさんたちが、清潔な場所で所在なくうろうろしている。そういう映画に麿赤兒が出ているというのはとても面白いと思う。

たけしの映画は結構毎回グダグダだった気もする。最初は目標があったけど、失敗して手ぶらでは帰れなくなって、ちゃんちゃん、と慰みのお祭りだけやって帰る。ただ、他の映画だと失敗してぐだぐだになったときに悪いとそのまま死んじゃう。