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肉体の悪魔のKuutaのレビュー・感想・評価

肉体の悪魔(1971年製作の映画)
4.1
合理的な思考を持つ牧師vsカトリックの血みどろバトルをナンスプロイテーション映画として、シスターたちの酒池肉林に重ねて描く。このジャンルの代表的な作品。

・貧しい人、醜い人、身寄りのない人が行き着く先。ペストの恐怖と禁欲生活の中、劣等感と嫉妬が積み重なり、遂に抑圧のタガが外れる。背中に障害を持つ修道女のリーダーは、新たな牧師の着任で妄想が爆発。キリストと肉体を交え、抱き合いながら地面をローリングする豪快な夢を見る。

・映像はわりと普通だが、画面の情報量と言葉のやり取りでグイグイ引っ張る。教会内でセックスしまくり大暴れの終盤。2次会もあるし、お客さんが帰った後に身内だけで飲む穏やかな3次会もある。楽しい。

・ペスト治療のため蜂に血を吸わせ、ワニが効くぞ、血行が良くなるんだ🐊と言うヤブ医者のくだりが最高。

牧師はヤブ医者を一喝し、ワニを窓から屋外へぶん投げる。一件落着と思っていると、行きずりで妊娠させた女性の父が剣を持って登場。怒りに震える父親に襲われるので、さっき投げたワニを拾い、剣のように使って応戦する。展開が自由すぎる。

・牧師は神への愛と個人的な欲望を重ね、街中の女性とセックスを繰り返す(ベネデッタに少し似ている)。合理的な信仰の実践にも、自分に都合よく宗教を利用しているようにも見える。

「セックスすることで神と一体になれる」と言う姿は全く応援できない。牧師は何故かモテる男で、別の女性に告白された時の「いやぁ〜困るわ〜」顔がクソ過ぎて凄い。「懺悔しに来ましたがなんの懺悔だったか忘れました」というおばちゃんに「たぶん神も忘れてると思うよ」と返すのもあまりに適当で笑える。

・ヤブ医者を始めとする「非合理的な因習と私欲」を併せ持った象徴として、カトリックが描かれる。修道女のリーダーは自分と牧師の立場の違いに絶望しながら嫉妬し、彼は悪魔と契約したのだと告発する。
ここに中世フランスの王権とカトリックの癒着が絡んで来る。ユグノー派の牧師率いるルーデンの街を疎ましく思っていたカトリックは、これを機に牧師を吊し上げ、街の自治権を奪おうとする。

・牧師は本当に愛する女性を見つけるが、カトリックに焚き付けられた民衆の熱狂に飲み込まれていく。中世こえーと思う一方で、牧師は過去の行いの報いを受けただけにも見える。この辺の両義的な描き方もバーホーベンみがある。
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