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トゥルーマン・ショーのEyesworthのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.6
【人生をライブ中継され続けた男】

ピーター・ウィアー監督、ジム・キャリー主演のコメディー映画に見せかけたホラー映画。

〈あらすじ〉
離島シーヘブンで暮らすトゥルーマン(ジム・キャリー)は保険会社の営業として、美人な妻にも恵まれ幸せな毎日を過ごしていた。順風満帆に生きてきたように見えるトゥルーマンだが、過去に父親を海で亡くしていることがトラウマとなっており、島から一度も出たことがなかった。そこで、トゥルーマンはフィジー旅行を計画するが、妻のメリルや不自然な交通トラブルで幾度も計画が阻まれてしまう。これまで何度もそのような違和感があったが、トゥルーマンは常に自分が何者かに行動を操れているんじゃないかと勘繰り始める。それもそのはず、なんと彼の人生は生まれた時から監視され続け、あらゆる場所に設置されたカメラによって世界中に生中継されていた。家族も町の人もトゥルーマンが産まれてから出会ってきた人々は全員俳優やエキストラで綿密な指示の元で動いていたのだ。この事実を知ったトゥルーマンは、本当の世界を見るために恐怖の海を乗り越えようと決意する。果たして彼はテレビの策略から逃げ切り、本当の自由を手に入れることはできるのだろうか…?

〈所感〉
最近見た『フリーガイ』は、主人公ガイが自分がゲームのモブキャラであることに気付き、いつものルーティーンを抜け出す行動をとることで世界を変貌させるストーリーだったが、本作の主人公トゥルーマンは生まれた時から大人になるまでその成長過程をカメラを通じて世界中の誰もが知っているスーパースターが、作られた世界を抜け出し、本当の人生を手に入れるストーリーだった。この両者はあらすじこそ似ているが、結末以降を想像してみると、ガイはこれからも作られた世界でいつもの仲間と幸せに暮らしていくが、トゥルーマンにとってはこれからが本当のスタートであり、新たな世界で0から始めていかなければならない、という点が大きく異なるだろう。彼はまず手始めに過去に恋したシルビア(ローレン)を探しに行くことだろう。そこに必ず道があるはずだ。
この物語の設定自体は非常に面白く、当時は一人の男の人生を生まれてから死ぬまで監視・中継するという、この異質な企画を明らかなフィクションとして楽しむことができたのだろう。ただ、現代ではこのような監視社会というのが現実味を帯びてきているので彼の境遇には笑えず、テレビに操られた道化師トゥルーマンが可哀想でならないと同情を禁じ得ない。誰よりも不自由で不憫な人生を送ったはずの彼だが、最後は観衆に向けてパフォーマンスする事ですべての出来事をエンターテインメントとして昇華させる人柄に感銘を受けた。これはひとえにジム・キャリーの演技が素晴らしかった。
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