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太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.4
これ、日テレ映画なのか。
スゴいな、お金のかけ方が。

撮影ロケと、キャストが、もうキャストが。
みんな泥だらけの消耗戦を戦い抜いたサイパン島の戦士達を彼らが演じる。さすがTV局映画。

竹内豊、岡田義徳、井上真央、山田孝之、中嶋朋子、板尾創路、光石研、柄本時生、唐沢寿明、阿部サダヲ、近藤芳正。

唐沢さん何かもう変に尖った役だし、山田孝之はなんかBossの工事現場のメイクそのまんまかと思うほどいつも通りで馴染みまくってる。

ただみんな“日の丸背負ってる”感じがなかなか様になるような役者の面々。見た目が「日本人!」って感じ。

1944年6月にアメリカ軍がサイパン島に上陸。
1945年8月15日に終戦の昭和天皇の玉音放送を経てもなお山を降りずにゲリラと化した日本兵達の1945年12月1日に山を降りて降伏するまでの話。

大場栄大尉。実在の人物。
1992年まで生きられたらしい。
享年78歳と言うから、この当時は31歳。
31歳にして大尉という位で、大勢を率いて劣勢を逃げながら、民間人を守りながら、誇り高く戦い抜いた人。
ちょっと現代に置き換えようもないぐらい凄すぎるキャリア。

ちなみに、このサイパン島の上陸は先日『ウィンドトーカーズ』で観た。
つまり、この竹内豊と『ウィンドトーカーズ』のニコラスケイジはまさに現地で向き合って戦ってたことになる。

いくつかの戦争映画を観てるとこういう事が起きるから面白い。

実際、本作にもニコラスが守り抜いたナバホの話題とかも瞬間的に出てたので、個人的にちょっと「おぉ!」って思った。

最後の軍歌を歌って下山のシーンも、演出かと思ったら、1945年の12月1日の降伏式典に大場隊47人が山から下山して現れた際に実際に行われてたらしい。
この47人と言うのも偶然なんだろうけど赤穂浪士を思わずにはいられず、その辺も妙に“日本の武士の誇り”みたいなのも感じる。

大場栄の、その戦況を見極め、諦めずに策を講じて戦い抜いた姿を“フォックス”と喩えられたわけだが、最後の最後まで「お国の勝利のために!」と日の丸日本の兵士として、大日本帝国の軍国主義に生きていた。

そこから民間人の身を案じて、先に山を降りさせ、戦局厳しく信じがたい“敗戦”を知り、なおも籠城するものの、最後は、最後に残った仲間や先の未来を案じて降伏を選ぶ。

そのガチガチの腹切り、玉砕の侍魂から、最後は生き長らえる降伏という手段を選んだ彼の心境はきっと誰にも推し量れないものだと思う。

まぁちょっと「太平洋の奇跡」というタイトルが何かちょっとミスマッチで、所々で米軍との対話などで、変な感動を与えようとしてる感が否めず、1年以上も水も食糧も乏しい山籠りに近い籠城戦だったわけなので、もっとホントのところは悲惨だったに違いないが、そこは少しキレイにしているのだろうな、と思って観た。

サイパン島の戦いは米軍がこれ見よがしの大軍を送ってきたり、そもそも日本の領土だったのでかなり日本軍や一般人の人口もいたことで、かなり過酷で凄惨でエグい戦場と化していたとここ最近色々調べたり観たりしてわかってきた。

そういう意味では本作はかなりソフトな作りで大場隊の生き様と最後の勇姿にフォーカスした作品。
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