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チャップリンの殺人狂時代のRyuのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
3.9
チャップリン作品の中ではかなりブラックでシリアスな内容の作品でした。
あの喜劇王 チャップリンが大量殺人者に。やっていることは残忍極まりないのですが、チャップリンがそれを演じることによって、どこかコミカルさが出ていたような気がします。重婚の妻の一人である強運の持ち主のアナベラのドタバタっぷりは笑えました。ここはさすがチャップリン といったところです。そんなコメディ要素も少しはありますが、基本はシリアスな雰囲気です。戦争や恐慌など当時の情勢をゴリゴリに皮肉っており、チャップリンからのメッセージが直に伝わってきます。主人公がどういう成り行きで殺人者になってしまったのか、それを考えると、なんとも言えない気持ちになります。今までのチャーリーの作風だとどんな困難でも前向きに頑張る姿が印象的でしたが、今作のそんな困難から悪事に手を染めてしまう という展開は問題の深刻さが強く伝わってきました。そしてラストのメッセージ、「一人殺せば殺人者だが、百万人殺せば英雄だ」。このメッセージで現実が顕になります。まさに名台詞。だからといって殺人が正当化される訳ではありませんが、チャップリンを殺人者として描くことにより、このメッセージがより刺さってきました。シリアスな展開の中にユーモアある部分もあって、皮肉やはり風刺もしっかり目にあり、ブラックコメディとしてよく出来た作品だと思いました。
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