螢

僕の村は戦場だったの螢のレビュー・感想・評価

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)
3.8
「イワン、よく考えろ。戦争は大人がやるものだ」

開始20分で泣き、救いのない哀しい結末に、胸を塞がれた作品。

第二次世界大戦下のソビエト。
ドイツ兵に家族を殺された孤児の少年イワンは、激しい復讐心から、子供であることを利用して軍の偵察任務に従事していた。
イワンとは親子ほども歳の離れた「同僚」たちは、まだ幼く将来のある彼を、幼年学校に送って戦場から離し、生かそうとするが、憎悪に燃えるイワンは聞く耳を持たない。
そして、戦闘が激化した時、イワンは再び対岸の敵陣へ偵察へ行くのだけど…。

もう、最初から最後まで、本当につらい。
過酷な偵察のために、痩せ細り、泥まみれになりながらも、消えない復讐心と憎悪に瞳をギラつかせるイワンの姿がつらいのは当然のこと。
そうかと思えば、迎えに来た仲間の姿に喜びをあらわにし、父親にするかのように無邪気にがっちり抱きつく、いかにも子どもらしい姿も、これまたつらい。

まるで息子であるかのようにイワンに接し、彼を救おうとしながらも救えず、過酷な戦況に自らも心身共に傷ついていく大人たちの姿もつらい。
中には、当然、敵に殺される人間もいる。

イワンが家族と共にあって幸せだった時分の、幸福いっぱいの無邪気な笑顔を映す詩情豊かな美しい映像が折々に挟まれるのが、これまたつらさを倍増させる。

もう、つらいのオンパレード。
でもそれが、戦争というものなんでしょうね。

タルコフスキー作品は初めてだったのですが、日本のモノクロ映像とは少し異なる、湿度を感じさせないというか、濃淡のグラデーションの少ない、白黒の明度がくっきりした映像が印象的な作品でもありました。
螢