dita

彼岸花のditaのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
5.0
親の心子知らず、子の心親知らず、じゃないんだなと。

親は子の気持ちをわかっていて、もちろん幸せになってほしくて、でも親だから、子に対して責任があるから、だったらその責任って何だろうと考えるに、親が思う子の「幸せ」に対してなのかなと思った。子は親の責任など関係なしに幸せになるとわかっているはずなのに、親自身が生きてきた時代や生活水準に劣らないように、自身が思う「幸せ」から外れないように、子を導こうとする。それが子が思う「幸せ」ではないと知っているはずなのに。それが親というものなのだろう。

子は親の気持ちをわかっていて、自分を心配してくれている、苦労させたくないと思っている、でも子の「幸せ」は好きな人と一緒になることで、今より苦労しても、いい生活が出来なくなっても、子の人生の責任を取るのは自分だ。それでも、愛情をかけてくれた親には認めてほしいと、わたしが思う「幸せ」をわかってほしいと思っている。それが子というものなのだろう。

節子が家族と過ごす最後の夜、幸せと寂しさが同居する夜、あの白手袋を見た瞬間に節子より先にうるうるしてしまった。次の日の朝、節子はどんな挨拶をしたのだろう、父はどんな言葉を掛けたのだろう。母はきっと何も言わずに静かに微笑んでいたんだろうな、父はきっと難しい顔をしていたんだろうな、映さなくてもわかる、映さないからこそ感じるその日の風景を想像してまたうるうるした。

トンネルを抜けたらそこにはきっと燃えるような赤い花が咲いていて、谷口と節子の家にはきっと赤いヤカンがある。

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赤い彼岸花の花言葉
情熱/独立/再開/あきらめ/悲しい思い出/思うはあなた一人/また会う日を楽しみに
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