夫と2人の子を持つ普通の主婦である主人公のローラ。毎週木曜日に買い物と食事と映画を見るのが唯一の楽しみの彼女が、ある日偶然開業医のアレックと出会う。互いに家庭持ちの2人が惹かれ合う様子を描いたラブドラマ。
あらすじだけ見れば、よくある不倫ものと思うでしょう。僕もそう思っていましたが、それでもかなり高い評価を得ているのは、何か理由がありそうと考えて鑑賞しました。その考えは見事的中。
まず監督は名匠デヴィッド・リーン。後に「アラビアのロレンス」「戦場にかける橋」など壮大な長編作をいくつも手掛けていますが、本作は1時間半にも満たない短さ。そして2人の男女の不倫というスケールの小ささ。彼の代表作とは真逆といった感じでしたが、この作品で彼の基礎はほぼ固まっていたと言う印象。
あんまり言うとネタバレになりますが、構成がとにかくお見事。ラストまで見るとそう来たか!と思わずニヤリとする展開でした。切ない音楽と夜の街に雨の演出も素晴らしい雰囲気作りで、映画の世界観から片時も集中が途切れません。
そして主演2人の演技も必見もの。特にローラ役のセリア・ジョンソンは、自分を信じてくれる夫を裏切ってしまい後悔と自責の念に苛まれる表情はリアルでしたし、自分の本心との葛藤、アレックとの関係に悩み抜く姿を巧く表していました。
主演2人だけでなく、ローラの夫や友人、喫茶店の女主人や駅員さんも含めて脇にいる人までしっかりとキャラを作り込んでいるのも大きなポイント。
終わり方もハッピーエンドでありながら、温かさと切なさ両方があり深い余韻が感じられるものでした。
ただの不倫ものとは一線を画す面白味があり、デヴィッド・リーンの代表作の礎という位置付けでも一見の価値はかなりある作品だと思います。