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逢びきのmasatのネタバレレビュー・内容・結末

逢びき(1945年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

身体を交わさない、
これこそ永遠に遺る恋・・・
さすが達観されているリーン卿。

今で言うプラトニックを貫く、
通りすがりにふと知り合った男女。
これほどにストイックさを貫くとは、余程一緒に居て満たされるのだろう。
そう、セックスの悦びは、終わりの始まりなのだ。

優しい眼差しの男と、全てを見通している男。共に優れた男の板挟みになる女。
リーンの男は、素晴らしい。
その男を際立たせるために、ヒロインをあまり個性がない、味気ない女優を、ワザと当てがったかの様だ。

そして驚くのは、リーンが映像派だったと言う事実。勿論、壮大なスペクタクルを撮る奴なのは体感済み。しかし、こんなちっぽけな作品で、ラスト、ヒロインを捉えるカメラが、なんといきなりゆっくりと斜めに傾き(ズームレンズもスローも手持ちカメラもない、35mmカメラが異様に大きく重い時代にだ)、
感情の揺れを技巧として表現し、
アクションカットへとつなげる手際の良さ!あの駅のカフェの最後の一瞬、その躍動感たるや、アラビアとジャングルとロシアの大地に匹敵するスペクタクルだ。

後にデ・ニーロとメリル・ストリープが、やりたいのにやりきれない不倫男女のきめ細かい傑作『恋におちて』は、本作を下敷きにしているのだろう。いや、不倫ドラマの源流の一つだろう。
ゆっくりと次第に大きく高まる2人の感情と、その(突然の)終焉・・・まさしく映画の一つの定番的ネタ。
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