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ラスト・タイクーンの一人旅のレビュー・感想・評価

ラスト・タイクーン(1976年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
エリア・カザン監督作。

1930年代のハリウッドを舞台に、若き映画プロデューサー、モンロー・スターと亡き妻に似た娘・キャスリーンの愛の行方を描いたドラマ。

フィッツジェラルドの遺作をエリア・カザンが映像化した作品で、タイトルのタイクーン(tycoon)は日本の「大君」に由来した言葉。“ハリウッドにおける最後の大物”という意味合いで問題ないと思う。

豪華なキャスティングが最大の魅力だ。主人公モンローをロバート・デ・ニーロが演じ、モンローを疎ましく思う上司ブレイディをロバート・ミッチャムが演じる。他にも、気難しい大女優ディディ役にはフランスを代表する名優ジャンヌ・モロー、勃起不全に悩む俳優役にトニー・カーティス、スターと対立する共産主義者・ブリマー役にジャック・ニコルソン、脚本家役にドナルド・プレザンス、弁護士役にレイ・ミランド...という信じられないくらい豪華な出演陣に驚かされる。

物語は、ハリウッドで絶大な権力を握るプロデューサーのモンローと、彼が撮影所で偶然見かけた亡き妻そっくりの娘・キャスリーンの愛を中心に描き、それが結果的にモンローの華々しいキャリアに負の変化をもたらしていくまでの過程を描いている。映画興行の失敗というよりは、プライベートにおける挫折が間接的にモンローを映画界から遠ざけることに繋がるので、ハリウッドの複雑な内幕劇というより一個人の愛の苦悩を描くことに焦点が置かれている。それでも、モンローと上司の対立関係や、女優と監督のいざこざ、監督とプロデューサーの関係、脚本家組合とプロデューサーの対立など、様々な職種の人間がハリウッドに集い、映画という一つの作品を協力しながら創り出すことの難しさは伝わってくる。

しかし、これだけの名優が揃っていながら物語が退屈であることが致命的。全体的に盛り上がりに欠ける印象で、終始淡々としている。浜辺におけるモンローとキャスリーンの愛の一夜を長尺を使って映し出したシーンや、哀愁漂うラストショットはそれなりに見応えがあったが、それ以外のシーンは静的過ぎて印象に残らない。ただ、役者の演技は絶品で、特にデ・ニーロの感情を抑えた演技とジャンヌ・モローの感情だだ漏れの演技、ジャック・ニコルソンの食わせ者感を前面に出した演技はどれも素晴らしい。
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