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青の稲妻のKSatのレビュー・感想・評価

青の稲妻(2002年製作の映画)
4.1
ヴェルディの「乾杯の歌」と思われる歌を延々歌い続ける友人(後にそれに対する回答であるかのように街中で流れる)、筒抜けなモーテル、老若男女集まる謎の歌謡ショー、裏がチョンの間になっている美容室、ヒロインがキャンペーンガールをする蒙古王酒のイベント、街で唯一のディスコ、お洒落なのか殺風景なのか判らないレストラン。
映画自体が面白いのはもちろんだが、背景として映る中国の地方都市の雰囲気があまりにも独特であり、もはや神秘的ですらある。

全体の作りとしてはシンプルな青春映画だが、「キッズ・リターン」や「その男凶暴につき」などの北野映画やアンゲロプロス映画、あるいは「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「パルプ・フィクション」、「花様年華」などの諸映画の要素があり、とにかく映画が好きだ、いろんなことがやりたいんだ、という作り手・ジャ・ジャンクーの意欲が伺える。

しかし、それでいて中国の現代がさりげなく映し出され、ただの映画好きのオマージュ映画とは程遠い、THE中国の映画、といえるような、独創的な力が生み出されている。

中国を代表する監督になったのもうなずける、力強く見事な一作。
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