ジャイロ

散り行く花のジャイロのレビュー・感想・評価

散り行く花(1919年製作の映画)
4.1
「野蛮な西洋人には仏の教えが必要なのだ」

中国人の青年は大志を抱き海に出る。

これはあれだ、逆ザビエルだ。

ホリが深いしアゴ割れてるし、なんか一生懸命に目を細めてるこの中国人の青年は、明らかに白人。『コンドル』に出てたリチャード・バーセルメスだったりする。

中国のシーンのセット感が尋常じゃないとか、中国人の中に明らかに中国人の服装した白人が混じってるとか、大袈裟すぎて今一リアリティに欠ける虐待お父さんとか、そんな細かいことを気にしていたら、グリフィスのメッセージが伝わってこない気がした。物語の本質を捉えられない気がした。

よって全部まとめて見なかったことにする。

するとどうだろう

悲愴感だけが、強烈に浮かび上がってくる。

お仕置きのむち打ちが滅多打ちすぎてツラい

「笑ってみろ」

虐待の恐怖に駆られて必死で作った偽りの笑顔

まるでこの世の不幸を一身に背負っているような歩き方

初めての優しさに戸惑う仕草

恐怖にひきつるその表情

まるで少女の絶叫が、絶望の叫び声が聞こえてきたような気がした。

サイレントの花と呼ばれたリリアン・ギッシュ、その仕草が、その目が強烈に訴えかけてくる。もはやセリフすらいらない。なんという演技力。


どっちに転ぼうが悲劇の予感しかしないボクシングの試合は、祈るように観ていた。

残酷な運命の足音が聞こえてくる。恐ろしい出来事が若い二人に降りかかる。

そしてまさかのシャイニング。このシーンは間違いなくシャイニングだ。


散り行く花のその散り際に

憐れで哀しい微笑みが見えたような気がした。