「野蛮な西洋人には仏の教えが必要なのだ」
中国人の青年は大志を抱き海に出る。
これはあれだ、逆ザビエルだ。
ホリが深いしアゴ割れてるし、なんか一生懸命に目を細めてるこの中国人の青年は、明らかに白人。『コンドル』に出てたリチャード・バーセルメスだったりする。
中国のシーンのセット感が尋常じゃないとか、中国人の中に明らかに中国人の服装した白人が混じってるとか、大袈裟すぎて今一リアリティに欠ける虐待お父さんとか、そんな細かいことを気にしていたら、グリフィスのメッセージが伝わってこない気がした。物語の本質を捉えられない気がした。
よって全部まとめて見なかったことにする。
するとどうだろう
悲愴感だけが、強烈に浮かび上がってくる。
お仕置きのむち打ちが滅多打ちすぎてツラい
「笑ってみろ」
虐待の恐怖に駆られて必死で作った偽りの笑顔
まるでこの世の不幸を一身に背負っているような歩き方
初めての優しさに戸惑う仕草
恐怖にひきつるその表情
まるで少女の絶叫が、絶望の叫び声が聞こえてきたような気がした。
サイレントの花と呼ばれたリリアン・ギッシュ、その仕草が、その目が強烈に訴えかけてくる。もはやセリフすらいらない。なんという演技力。
どっちに転ぼうが悲劇の予感しかしないボクシングの試合は、祈るように観ていた。
残酷な運命の足音が聞こえてくる。恐ろしい出来事が若い二人に降りかかる。
そしてまさかのシャイニング。このシーンは間違いなくシャイニングだ。
散り行く花のその散り際に
憐れで哀しい微笑みが見えたような気がした。