めしいらず

疑惑のめしいらずのレビュー・感想・評価

疑惑(1982年製作の映画)
4.1
清張×芳太郎は面白い!保険金目当ての殺人容疑をかけられた女は如何にも黒っぽい。不利な証言は続々、マスコミは稀代の悪女と扇情的に喧伝し、彼女への心象を悪くする。女はそんなことを歯牙にも掛けず傍若無人に誰彼となく噛み付き、自分から心象を尚悪くしていく。四面楚歌であるのに女は国選弁護人に対しても横柄だ。そんな彼女を弁護人は冷然と見据え一歩も退かない。切れ者らしく冷静沈着に仕事を進めるけれど、それを女の感情的な振る舞いが何度も台無しにしてしまう。忌み嫌い合う二人の女の緊張関係が物語を引っ張っていく。証言者たちとの法廷での丁々発止の迫力。利己的に感情そのままをぶつける容疑者桃井かおりと、冷血で子供にも容赦ない弁護士岩下志麻の、素地もこんな風なのではないかと邪推させるような、恐ろしい名演技。また警察の汚いやり口のこと。マスコミの印象操作と流され易い世情のこと。社会性への目配りも忘れない。そしてもちろんラスト。最後まで交わらない女二人の、憎悪を介した友情めいた関係を示すような、奇妙に息の合ったあのワインのシーンの凄み。真っ白なスーツを汚されながらその手を払うでも避けるでもなく、まずは悠然と煙草を消すのが堪らない。そしてあの目にも留まらぬ報復の一閃。観る者みなが思い切り溜飲を下げたことだろう。
再鑑賞。
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