すずき

デビルズ・バックボーンのすずきのレビュー・感想・評価

デビルズ・バックボーン(2001年製作の映画)
3.8
スペイン内戦時代の孤児院が舞台。
街から離れたその場所は、実は共和派の隠れアジトでもあった。
そこに新しく入ってきたカルロス少年は、夜毎少年の幽霊を見るようになる。
実は幽霊は孤児院に不発弾が落ちてきた日に消えたサンティ少年の幽霊で、彼はカルロスに「大勢の人が死ぬ」と警告する…。

デル・トロ監督には2つの顔がある。
1つは「ブレイド2」「ヘルボーイ」「パシリム」に代表される、漫画・特撮オタク監督としての顔。
もう1つは「クロノス」「パンズラビリンス」「シェイプオブウォーター」に代表される作家・芸術家監督としての顔。
この映画は後者のもので、同じスペイン内戦下での子供を描いた「パンズラビリンス」とは姉妹篇(兄妹篇?)のような関係だ。
モンスターor幽霊が被害者、という立ち位置なのは「シェイプオブウォーター」にも通じる。
あと、デル・トロ作品全てに共通してるけど、夜のシーンがキレイなんだよねー。蒼っぽい光に照らされた、幻想的な雰囲気で。

内戦を背景に、大人も子供も多くのストレスを抱えた孤児院。
そこに渦巻く不穏な空気や悪意は、孤児院の真ん中に放置された不発弾が暗喩している。
そしてタイトルの「悪魔の背骨」とは、背骨に障害を持った胎児の事で、これも内戦という不幸な境遇に生まれた子供たち(と大人たち)を暗喩する(多分)。
別に不発弾が爆発したり、悪魔の赤ちゃん幽霊が出てきたりするワケじゃなくて、メタファーの為だけのアイテムをメインビジュアルに持ってくる所が文学的だ。

物語は前半は古典的な怪談といった趣。
派手さは無くて、あんまし怖くない。
幽霊のサンティも壊れた陶器人形のような、不気味ではあるがどちらかというと幻想的な感じだし。
後半はガラッと変わって、サバイバルホラーのような、西部劇のような(監督談)展開になる。
「パンズラビリンス」とは対照的なストーリーかな、と感じた。
ちなみに、前半はカルロス少年が主人公だったけど、後半になるにつれてハイメ少年が存在感を増していき、クライマックスでは実質主人公だ。

欠点はDVDパッケージの壊滅的なダサさ。B級ホラー感ある。
ってか、ホラーというジャンルに分類するのが間違ってるぞ、この映画。
あと字幕に1箇所、明らかに漢字変換ミスしている所があったのが残念。