すずき

英国式庭園殺人事件のすずきのレビュー・感想・評価

英国式庭園殺人事件(1982年製作の映画)
3.7
1694年のイギリス、富豪貴族の邸宅。
党首のハーバードは、家族よりも庭園を愛する男だった。
彼の夫人は夫婦仲を修復する為に、著名な画家であるネヴィルに庭園の絵を依頼する。
だがネヴィルは傲慢な男で、出張でハーバードが不在の12日の間で絵を描く代わりに、夫人の身体を要求する。
こうしてネヴィルは絵を描き始めたが、庭園に落ちている物体が、ハーバードの殺害を示唆している事に気づく。
そして12日後、完成した12枚の絵が示す事実とは…

「コックと泥棒、その妻と愛人」で私に衝撃を与えた、ピーター・グリーナウェイ監督の衝撃の長編デビュー作。
平面的で舞台の様な画面構成、色彩のコントラストと美しい衣装、そして煌びやかで優雅かつ下品で下世話な内容!
既に彼のスタイルは完成していたッ!

パゾリーニ監督の「テオラマ」のように、性的魅力でもって家庭を破壊していく魔性の男の話かと思ったら、その着地点は大きく違う。
家族の様々な思惑が絡み、やがて明らかになる事件の中心にいるのは誰か、権謀術数渦巻く中での騙し合いを描いた、結構ガチめのミステリーでした。
真犯人は誰か?という犯人当てミステリーではないですよ。

しかしかなり難解であり、ミステリ映画上級者向けの作品。
キャラクターを取り巻く状況は説明されるが、彼らの心の内は一切本音で語らない。
その為、彼らの立ち位置から導き出される目的をしっかり捉えられないと、緻密に構成された全体像を見る事は出来ない。

かくいう私も、映画を楽しめた事は楽しめたが、ストーリーの理解度は低い。
しかし、とあるサイトで完璧な解説がされていて、そのストーリーの全体像と伏線にビックリ。
鑑賞時も理解出来てたら、スコア4.0以上は確実。

なぜカトリックで孤児の甥を引き取ったのか?
なぜ庭師をクビにして、新しい庭師とキャッキャウフフしてるのか?
なぜ夫人は再訪した画家に再び抱かれる事を選んだのか?
そして1694年への意図とは?
映画力とインテリジェンスに自身のある方には是非とも挑戦して頂きたい。オススメです。